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大崎善生  「いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件」(角川文庫)

 2007年8月24日から8月25日の真夜中に起きた、名古屋で女性が車に拉致されて、そのまま殺された事件を大崎がルポした作品。

 被害者は31歳の磯谷利恵。犯人は金強奪の目的で闇サイトで知り合った主に3人の男たち。

 大崎は公判を傍聴したり、事件を扱った刑事たちにも取材ができたのだろう。殺害の状況が残酷でリアルだ。

 利恵さんは、手錠をはめられ車に押し込められた。犯人たちは、財布から現金を抜き取り、刃物をつきつけて、キャッシュカードの暗証番号を聞き出す。利恵さんは恐怖におびえながら「2960」と告げる。利恵さんが語った暗証番号はもちろん嘘で、犯人を「憎む」を示している。

 もう利恵さんには用がないと、犯人が強姦をしようとするが、懸命に暴れ防ぎ、強姦は諦め、殺害にかかる。
 首をガムテープで覆い、そして紐で首を巻いて両端を犯人たちは引っ張り合うが死なない。それでハンマーで頭を思い切りたたきつけ、頭蓋骨が割れる。それでも利恵さんは死なず、
「お願い、殺さないで」と声をあげる。

これに逆上した犯人は狂ったように利恵の頭を凡そ30回もハンマーで叩き、利恵さんを殺す。
 ルポは利恵さんと母富美子さんとの、愛情こもった生活を丹念に描き、いかに犯人が非人間かを際立たせている。

 このルポでは、2つの今までにない大きな出来事を取り上げている。

富美子さんが、犯人たちの死刑を求めて署名活動を始めたこと。今までは犯人の立場や人権を守るため減刑とか、再審実現で署名を集めることはあっても、被害者が極刑を求めて署名活動をすることは見たこともない。しかも、この署名が33万を超えたのである。裁判所に提出されたが、もちろん証拠物件としては採用はされなかったが、いっぱいつまった署名用紙の写真が裁判では映された。

 かって永山則夫連続射殺事件から導き出された法則で、一人殺せば最高刑は無期懲役。2人殺せば無期か死刑、3人以上殺せば死刑が踏襲されていた。ところがこの裁判では驚くことに、3人で1人を殺したのに、自首した1人は無期だったが、残った2人に死刑判決がくだされた。そして、この判決はマスコミをはじめ社会から圧倒的な支持を得た。結局は上告され覆されたが・・・。

 現在は、死刑というのがいかに残酷で、国際的にも死刑の存在する国が減り少数になっていることで、死刑を非難する本は多数あるが、この作品は、逆で、被害者目線からルポを行い、画期的な内容になっている。

 事の是非はわからないが、大崎の執筆姿勢の英断と勇気に拍手を送りたい。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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