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綿矢りさ    「手のひら京」(新潮文庫)

 谷崎潤一郎の「細雪」を彷彿とさせる、京都奥沢家の3姉妹の揺れる思いを描いた物語。作者の綿矢さんは京都生まれの京都育ち。京都人の気質や、四季折々の情景が鮮やかに描かれ素晴らしい出来栄えの作品になっている。

 長女の綾香は、すこし引っ込み思案で、恋愛も縁遠くなっている。次女羽依の会社の同僚宮尾を羽依から紹介してもらいぎこちないがお付き合いを始める。

 次女羽依は、入社研修で、上司になる前原に好感を感じ、付き合いを始める。しかし、前原のぞんざいで、ふてぶてしい態度に嫌気がさし、互いに連絡をしなくなり、その期間6か月。もう別れたと判断し、同僚の梅川と付き合いを始める。この後、異常な前川の嫉妬とパワハラ、ストーカーに苦しみ、梅川との関係もおかしくなりそうになる。

 3女の凛は大学院に進み、その後、窮屈な京都を離れ、両親に内緒で、大手食品メーカーに就職内定をもらうが、家族全員が京都より外にでたことがないということで、東京での就職に猛反対を両親から受ける。

 それぞれの姉妹が、やっかいなことに遭遇するが、それを、頑張りとしなやかさで乗り越えてゆく。

 綿矢さんは、感性鋭い作家。一歩踏み込んだ個性的な表現が多くちりばめられ、その表現に出会うだけでも、読み手は感心し幸になる。

 綾香と宮尾の初めてのレストランでのランチデート。
 お決まりの趣味はなんですか。スポーツはお好きですか。から始まり、ぎこちないが和やかな雰囲気になる。そこをこんな風に表現する。

 「分別ある大人同士の会話として、ところどころ相手を褒めながら、和やかに会話は進むが、その一方で綾香は、自分たちはまるでおたがいのお尻の匂いを嗅ぎあってる、散歩の道でばったりでくわした犬同士みたいだ、という思いもあり、気恥ずかしさをおさえるのが大変だった。」
 想像を超える表現。

凛が、親に京都を離れることに反対され、直後秋の京都を自転車で回る。その時の紅葉の風景描写も見事。
「もみじの葉は真っ赤な色に注目されがちだが、赤ちゃんの手のひらに喩えられこともあるけど、花弁と呼びたくなるほど美しい葉先は繊細に尖り、柔らかい印象はない。心にある形の何かに似ている、痛み、憧憬、羨望。一枚拾って手のひらにのせると、紅葉の葉が皮膚に溶け込んでいきそう。凝縮した赤がきゅっと小さくて目に染みる。」

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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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