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木宮条太郎   「弊社より誘拐のお知らせ」(祥伝社文庫)

 作者木宮は「時は静かに戦慄く」で第6回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞している作家である。

 この物語では、元々江戸時代創業の製紙会社奥羽製紙が秋田パルプと名前を変え製紙事業を続けてきたが、不況の波をかぶり、大胆なリストラを行う。黒字の製造部門を秋田パルプに残し、すべての営業部門は、秋田パルプから切り離し、倉庫を持っていた千葉に移し千葉サプライという会社が設立される。

 捨てられた千葉サプライのトップについた小柴は、製紙販売に見切りをつけ、産業素材なら何でも扱う商社に切り替え、建設資材、電材、産業用センサーまで仕入れ販売をして、業績を伸ばし、停滞している秋田パルプを凌ぐ存在となる。

 そこに、秋田パルプと千葉サプライを合併させるというプロジェクトが進行する。しかし、因縁の両社。反対する社員が多く、プロジェクトが進行しない。

 そんな中、秋田サプライで合併について説明する会合がもたれ、どちらにも顔がたつ、千葉サプライの創業者、すでに引退して久しい小柴が説明に秋田に行くことになる。

 ところが、この小柴が千葉から秋田に行く途中で、何者かに誘拐される。そして、犯人は千葉サプライに7億円の身代金と合併プロジェクトの即時停止を要求する。

 千葉サプライは東証2部に上場している。有価証券報告書の規定では、「災害に起因する損害、または、業務遂行上で発生した損害」その額が前期純利益の30%を超えた場合は記載することが義務付けられている。
 身代金の7億円は30.01%に相当する。

会社では、身代金を支払う必要があるのか。小柴は、今は会社を離れた人。身代金は小柴が払うべきではないか。あるいは、小柴の持っている財産をすべてだし、不足分を会社でだせばということが議論される。

 7億円のうち、犯人の指示により2億円が現金で用意され、それの犯人の受け取り、小柴の解放まで、それなりに緊迫した展開が続く。

 しかし、最後ががっかり。

実は、この誘拐、小柴の狂言。小柴が会社社長を退き、家に引っ込んでも、入れ代わり立ち代わり、会社について会社から相談に来る。それがわずらわしくて仕方がない。自分たちで考えて決断し会社経営をしてもらわねばならない。狂言誘拐を小柴がしたことがわかると、さすがに誰もこなくなるだろうというのが動機。

 しかし、小柴のような人はまずいない。会社をトップまで極めた人は、会社を退いても、現役の会社幹部が自分のところへ相談や報告に来ることを当然と考えている。それが楽しみで仕方ないのである。誰も相談に来ないなんて状況は、社長まで務めた人は考えられないのが一般的である。
 物語の狂言誘拐は現実的でない。

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