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鎌田慧   「大杉栄 自由への疾走」(岩波現代文庫)

 大杉栄は、東京外国語学校時代、下宿先で、谷中村の鉱毒事件を知る。そして、この事件の追求運動に同宿していた学生が参加していたのに触発され、自らも運動に参加する。さらに左翼系の新聞「万朝報」を購読。そこで、堺利彦や幸徳秋水を知り、社会主義者、アナキストに傾倒してゆく。

 大逆事件で、秋水ら12人が死刑にされるが、この時、大杉は同じ活動家の山口狐剣の出獄歓迎会で赤旗を振ったかどで2年半の刑期で投獄中により、大逆事件に連座されることは免れる。

 出獄したときは、尾行はつけられるし、集会は官憲により止められ、出版物は即発禁処分となり、締め付けは一層厳しくなっていた。同志の数も激減していた。

 それで、最初はマイルドな雑誌「近代思想」を発刊したが、それでは手ぬるいと「平民新聞」を発刊する。即発禁処分となったが・・・。しかしめげずに第2号を刊行する。その巻頭の論文「秩序と紊乱」がこの本の作者鎌田の魂を揺さぶる。

 「人類の多数が。物質的生活と精神的生活との合理的発達に必要なるあらゆる条件を奪われ、科学的研究や芸術的創造によって得られた享楽を夢にだも知らざる、その日稼ぎの駄獣的生活に堕す。これ即ち『秩序』である。
 人類の多数が、男は機械のごとく働き、女は大道に淫をひさぎ、子は栄養不良のために斃れる。これ即ち『秩序』である。
 雇い主の貪欲なる怠慢のために、或いは機械の破裂や、或いはガスの爆発や。あるいはまた土砂崩れ、岩崩れの下に毎年数千万の命を失う。これ即ち『秩序』である。
・・・・・過去一切の祝聖されたる価値の転覆、新しき思想と新しき事実との大胆なる創造。これ即ち『秩序』の『紊乱』である。
 かの『秩序』の為に殆ど死せんとし死すべかりし命を、この新しき思想と事実に捧げて、まさに来らんとする社会的大革命への道を拓く。これ即ち『秩序』の『紊乱』である。」

 この思想を基軸にして、鎌田は社会の実態をルポする。私は大正、昭和の初めと現在までの歴史的発展の検証と俯瞰的に物事を見つめることが大切と思うが、昨今の過労死問題、トヨタの絶望工場を取り上げ、彼には大杉栄時代と今の日本は変わっていないようにみえる。

 地獄のような底辺に暮らす、虐げられている人々の群れが大量にいる。その視点をひたすら信じ、現在を無理に断罪しようとすると、主張は空を舞い、孤立化は深まる。

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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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