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桐野夏生    「夜また夜の深い夜」(幻冬舎文庫)

 桐野さんは不思議な作家だ。この作品を出版したのは、60代半ば。近いか同じ年齢の作家には、小池真理子、宮本輝、浅田次郎など錚々たる大作家たちがいる。そして、大御所たちは、風格も十分で、60年の風雪を感じさせる作品を発表している。

 この作品、内容に重みはあるが、文体、文章は若々しく、桐野さんがデビューしたとき、得意としていたロマンス小説を彷彿とさせる。

 友達を作ってはいけない。名前を言ってはいけない。誰とも関りを持ってはいけない。学校は小学校だけゆき、その後は、一緒に暮らす母親が勉強を教えてくれる。その母親の名前がわからない。

 こんな状態でアジアやヨーロッパの都市を母親と一緒に転々とさせられている主人公マイコ(仮名)。今はイタリアのナポリの貧民街に暮らす。

 母親の名前は?父親は誰?何であちこち逃げ回るように転々としなければならないの?
真実を追求して疾走するアイコのサバイバル小説。

 ナポリの貧民窟で同居したエリスの告白が激烈。想像の範囲を大きく超えている。

エリスはアフリカ、リベリアの首都モンロビアで家族と暮らしていた。両親と兄弟、姉の6人家族。雑貨店をしていたのだが、リベリアで内線が勃発。家を無くし、家族で各地のキャンプを逃げ回る。隣国コートジボワールの国境近くのキャンプまで来たが、そこからが超えられない。そこに反政府軍がやってきて、政府軍と戦争状態になる。

 キャンプ難民は、爆弾が飛び交う中、逃げまくる。父親が言う。決して後ろを振り向くなと。
 女性の大きな悲鳴が聞こえたのでエリスは禁を破って後ろを振りかえる。

弟の首が鉈で斬りおとされる。母が銃撃され、血をふき倒れ死んでゆく。川へ姉と逃げる。血だらけの死体が浮かんでいる。それは父親だった。兄も殺されたことを確信する。

 姉は立ち止まったその場で兵士たちに囲まれる。震えていたところ、素っ裸にされ、兵士たちに玩具にされる。そのあと、兵士たちに発砲され、最初に腹、そして胸、最後に頭。

 姉と年齢が変わらない兵士たちが、姉の腸を蹴り上げながら大笑いしていた。

 エリスは娼婦もする。
 「祖国にいるよりマシだからさ。娼婦か盗みか、どころじゃない。生か死か、だもん。」

これを描いた桐野さん。その、真剣で熱いまなざしに脱帽する。70歳になろうとしている桐野さんは、まだまだ大きく成長する。

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| 古本読書日記 | 05:48 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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