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太田靖之    「産声が消えていく」(祥伝社文庫)

主人公の菊池は希望会総合病院の産婦人科医師として働いている。希望会総合病院はすべての緊急患者を受け入れるという方針で運営している病院。

 ある日、白沢みどりという患者の通常分娩を行うことになっている時、尾張由里というお腹に激しい痛みがある患者が緊急ということで、救急車で運ばれてきた。すべての患者を受け入れるという方針だったので、受け入れたが、通常の状態ではない、陣痛ではないかと菊池のところにまわされてきた。

 白沢みどりは助産婦にまかせて、菊池は由里の診察を行い、出産直前であることを知る。ところが、由里は2人の子供を帝王切開で産んでいる。ということは、出産は帝王切開しかない。しかも、すでに子宮が破裂しそうな状態である。

 この治療場面は専門的な処方が多く、よくわからないが、緊迫感は十分。その処方の途中で、小幡から連絡がある。白沢みどりの容態が悪化して、脈拍が60にまで落ちていると。

 ここで、思い切って胎児をとりだせば、胎児、母親も重大な障害が避けられないかもしれない。しかし白沢みどりも危ない。

 結局、由里の子供は健康で誕生、由里も問題なかった。

 しかし、白沢みどりは瀕死の状態で、生まれた子供は仮死状態。懸命の人工呼吸で、命はとりとめたが、重い障害を抱えることになった。

 それで、白沢みどりの夫が、医療過誤として、1億2千万円の損害補償を病院と菊池に求めて提訴する。

 裁判はすべて仮定を想定して、裁判官がその仮定のどれが真実か判断することとなる。

もし、由里の子供を優先せず白沢みどりの緊迫状態を優先で、取り出していたら、みどりは健康な子供を産めたかもしれない。しかし、由里の子供は健全で産めなかったかもしれない。

 そもそも、由里を病院が受け入れたことが間違い。しかし、受け入れなくて病院を探していたらその間に子宮破裂が起こっていたかもしれない。

 裁判は原告の要求通り1億2千万円の賠償を病院に課した。

物語は、作者太田の経験からできているように思う。しかし、どんな方法が最適だったかを裁判官が判断して、それができなかったからと、莫大なお金を支払わねばならない、こんな判決がでてしまうと、医者になる人は無くなってしまうのではと思ってしまう。

 この物語によると、医師の平均寿命は通常の平均より10歳短くて、更に産婦人科医師はその寿命より更に10歳短いそうだ。

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