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万城目学    「バベル九朔」(角川文庫)

  万城目さんは、大学卒業後、一般の会社に就職したが、退社し、おじさんが所有する東京のビルの管理人となる。会社をやめたことは両親に言えなかったので、東京へ転勤となったと嘘をつく。

 それから、作家としてデビューするまでの3年間、ビル管理人として生計をたてる。
この作品には、その3年間の揺れた思いが、詰め込まれている。

 書いて、書いて、あらゆる文学賞を調べて、応募する。しかし、一次予選さえも通過せず、落選ばかり続く。
 小説は書けたのだが、なかなかピッタリとくる、タイトル名が浮かばない。いい加減なタイトルをつけたばかりに、賞選考に落ちたのじゃないかと疑心暗鬼が募る。

 悶々として揺れる自分。
作家になることは諦めて、ビルの管理人一筋でもいいのではと思う。

 そう思うと、この作品のように想像が広がる。主人公の九朔は祖父が38年前に建てたビルの管理人をしているが、そのテナントに入っていた過去の店がすべて連なって伸びるビルの中の異界にはいる。そのビルの後継人として祖父は九朔を指名する。過去に消えた店は90店に及ぶ。ということはビルは90階あることになる。その90階を九朔は旅する。

 しかし、一方、小説が新人賞をとり、豪華な授賞式が行われ、文壇の重鎮に称賛の言葉をもらい、懸命に受賞の挨拶をしているところを想像する。さらに、書店で受賞作家サイン会をしているところも想像する。

 そんな3年間の悶々とした生活を、現実から異界へとびまた現実に戻る、パラレルワールドをユーモアをふんだんに投入し、描く。

 都会の古い雑居ビルは、最上階までの階は、色んな事務所や、居酒屋、スナックなどが入居しているが、最上階だけは、窓から障子がみえたり、カーテンなどが敷かれ一般住宅になっている。ビルのオーナーが住んでいるのである。

 そんな小さなペンシルビルが目立つ。
こんな風景を書いていている万城目の、3年間の漂流を、ひしひしと感じてしまう。

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| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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