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木皿泉   「昨夜のカレー 明日のパン」(河出文庫)

 テツコとギフを中心にした連作短編集。
この作品はともに脚本家である和泉努と妻鹿年季子夫婦合作の作品集である。

 主人公のテツコは夫一樹が25年前に亡くなり、テツコがギフさんと呼ぶ義父と2人で一つ屋根の下で暮らしている。
 なかなかどの作品も味わい深いが、私が好きなのは「山ガール」。

ギフは定年間近になって自分に趣味が無いことに気付き、何か趣味を持とうと考えていたとき、テツコに「山歩き」を進められる。そしてテツコから山ガールの小川里子32歳を紹介してもらう。ギフは里子を師匠と呼ぶ。師匠に道具や山用の衣装を教わりながら購入。

 2人で、初心者が登る山に挑戦する。
途中一回休み、頂上に到達。そこで、並んで休憩し、缶ビール片手に話をする。

 ギフが、
 「どうして山登りを始めたんです?」と聞くと、師匠が
 「結婚しようと思っていた人が山で死んだんです。」
ギフはとんでもないことを聞いてしまったと思い、気を紛らわせるため、更に缶ビールの栓をあけ飲み干す。

 しばらくすると、師匠ももう一本缶ビールをあおり、おもいつめたように言う。
「さっきの恋人の話はうそです。実は恋人は別の女性の子供ができたと言って、私のところから去ってゆきました。私は振られたんです。」と。

 この告白の違いに驚いたのと、ビールの飲みすぎで酔ったこともあり、ギフはすこしふらつき、足元が不確かになり、帰りの山道をうまく歩けなくなる。

 すると師匠が言う。
「わたしがギフさんを背負います。背中に乗ってください。」と。
「それはとても無理ですよ。」

すると師匠が毅然として言う。
「ここに残るのはギフさんではありません。私の前の彼氏です。」と。

とたんに、背中に筋が一本走り、ピシっとなって、ギフは歩くことができるようになる。
師匠の、有無を言わせない張った声が聞こえてきそうです。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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