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美濃部美津子    「志ん生の食卓」(新潮文庫)

 落語が好きで、たまにネットなんかで聞くが、やはり、最も素晴らしい落語家は古今亭志ん生である。落語は、全く志ん生で始まり志ん生で終わる。志ん生の落語は、出囃子が演奏され始めた途端、聴衆がさあ笑うぞと意気込んでいるのがわかる。そして、高座に座った途端、我慢できない聴衆の何人かが笑い出す。落語も超一流なのだが、それ以前に存在そのものが面白い。こんな落語家は今後出てくることは無いと思う。

 このエッセイ、志ん生の長女である美濃部美津子さんが、貧乏時代の志ん生一家の食べ物風景を中心に描いている。

 「多古久」というひいきのおでん屋で、しこたま酒を飲んで、お弟子さんに、車を探してこいと命令。その車を捕まえてくるまで、また酒を飲む。

 それで、高座にあがる。案の定落語の途中で眠くなり高座でいびきをかいて眠る。観客が「そのまま眠らせておこうよ。志ん生の眠る姿なんてみられるもんじゃねえ。」とそのまま起きるのを待つ。

 横綱双葉山と飲み比べをしたそうだから、その強さは尋常ではない。

何でこんな破天荒な落語家が誕生したのだろうか。
 それはやはり徹底的に貧乏だったから。しかし、底抜けに明るい貧乏だったから。お金も無く、食べ物が無くなると、外へ行って、はこべやせんぶり、たんぽぽを採ってきて食べたそうだ。

 志ん生の芸で名人と思うのは、そばを食べるのを演じるときだ。本当にうまそうで、その落語が終わると、ついついそばを食べにでかけるくらいだ。

 「藪蕎麦」の大将が、志ん生はそばを4-5本たぐってから3分の1たれにつけ、蕎麦を口に運び、一気に蕎麦を吸い込んだ。この姿が、本当にそばが美味しくみえると言っていた。

 この食べ方をそのまま志ん生は高座で演じた。
そばをとりあげ口にいれ一気にのみこむことを「たぐる」と言う。この作品でそばを食べる表現を「たぐる」にしているところも味わいがあり粋だ。

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| 古本読書日記 | 06:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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