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森晶麿   「葬偽屋は弔わない」(河出文庫)

 主人公のセレナはその時、保険調査員をしていた。保険調査員というのは、保険請求者の事案に不審があると思った保険会社の依頼により事案調査を担う人たちのことを言う。

 セレナの扱った事案。7年前に妻のもとを突然夫が失踪する。7年たっても夫が現れないときは死亡届を提出できる。妻は7年半前に夫に保険をかけている。そして妻は現在再婚している。再婚相手は失踪した前夫の友人だった。

 これは保険金詐欺ではないかと更に調査をしようとすると、保険会社より調査打ち切りの指示がくる。そんなに時間と金をかけて調べる必要は、事件捜査ではないから不必要と言われる。ここでセレナは腐る。さらに、その時大切だった恋人を交通事故で失う。

 そしてダメ押しとなったのが、父の経営していたコンサルタント会社の倒産。母親より教育ローン、住宅ローンの肩代わりをしつこく要請されるようになる。

 死のうと思って夜の街をさまよっていると、死神のような男に声かけられ名刺を渡される。そこには
 「貴方の素敵なお葬式をお手伝い、葬偽屋 殺生歩武」と書かれていた。
葬儀屋でなく葬偽屋。生きている人が、すでに死んだものとして嘘の葬儀をする商売である。

 殺生はセレナに、どうせ死ぬのなら4か月自分に命を預けろとセレナに言う。

葬偽屋には結構依頼がくる。多くは、自分が死んだら、あの人はどういう態度をするかみてみたいというのが一番多い。それから、行方知らずになった、家族の誰かが、葬儀をするということで。表れるのではないかという希で。

 だから葬偽屋の葬式には、人生の縮図、物語がこめられる。
そして、殺生とコンビを組んでいるのが死体を創る黒村。

 殺生、黒村の人物造形がよくできている。

物語は、いろんな事案を描く連作短編集になっているが、最後に最初に描いた7年前失踪事件の真相が暴かれ、これが殺生、セレナを巻き込み、感動的な仕上がりになっている。
 単なる短編集ではなく、大きな筋の通った物語になっている。見事である。

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| 古本読書日記 | 06:01 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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