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坂木司   「青空の卵」(創元推理文庫)

 「仔羊の巣」「動物園の鳥」に続く、ひきこもり探偵シリーズ、最初の作品、坂木処女作品でもある。

 ワトソン役である、坂木司が市中で遭遇した奇妙な事件を、ひきこもりの友人ホームズ役である鳥井信一が真相を解き明かし解決するというのが物語のベースになっている。

 坂木は、みんなとも仲良くでき、普通の家庭に育ち、一般的な少年だった。しかし、偉人伝を愛読していて、ダリやピカソのような異能者や奇才、孤高としていた偉人たちに傾倒していた。

 14歳の時にであった鳥井は、まさにダリやピカソを彷彿とさせる少年だった。異能、奇才ゆえに、他人とのかかわりができない。それゆえ、徹底的に他人から無視され、虐められる。常に孤高としている存在。結果、ひきこもりとなってしまう。
 しかし坂木にはそれが自分の理想とする人間に思え、「友達になってほしい」と鳥井にお願いして2人は親友となる。

 作品は5つの中編が収められた連作集になっている。

普通の作品と違うなあと思ったことが3点ある。

まずは、坂木の異常ともおもえる、鳥井にたいする友情、信頼の厚さである。
坂木は大学卒業して就職に外資系保険会社を選んでいる。比較的、勤務が自由で、外回りが多い。何かあればいつでも鳥井のところへ行ける。鳥井との友情が最も大事という観点で仕事を選んでいるのである。

 それから、一つの事件に遭遇した人が、その後の話にも登場するところ。最初の人間の係わりが、坂木、鳥井の2人から始まり、その係わりが、数々の事件を通して、広がってゆくことである。

 更に、すべての物語に登場する事件の中心になる人物が、人間関係がうまくいかず、それゆえに事件を引き起こしてしまうところ。つまり、鳥井の生き写しのような人間が事件を引き起こすのである。どの物語も鳥井が主人公のように錯覚してしまうように仕立てられている。だから、鳥井も事件の真相を見事に推理し、当てることができる。

 坂木、鳥井の特異と一見思われるような友情、関係が基盤になり、人間の交流が広がり、それに連れ、坂木、鳥井の関係が、徐々に拡大し、2人が成長してゆく物語になっている。

 ミステリーの体裁をとりながら、読者に、人間関係の大切なことを提示している。

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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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