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中山七里   「総理にされた男」(宝島社文庫)

 全く売れない役者加納。ただ舞台劇の前座で、容貌としゃべり方が時の総理真垣とそっくりということで、真垣のまねをすることだけが取り柄の役者だった。

 ある日、真垣総理が難病を患い、公の活動が不能になる。官房長官の樽見が、加納の総理を演じる動画をみて、総理が回復するまで、加納に総理をしてもらおうと決め、加納を拉致し総理の影武者に据える。

 2-3日偽総理をしたら無罪放免となるはずだった加納。とんでもないことに総理が亡くなり、偽総理をやめることができなくなる。樽見の手回しで、亡くなったのは加納ということになってしまった。

 しかも、すべてを任せ頼りにしていた樽見までが、心臓発作で倒れ亡くなってしまう。

 加納は総理として東日本大震災の一年後、石巻を訪れる。復興予算として九兆七千億円の予算を組んでいるのに、復興が全く進んでいないことに驚き、どうなっているか調べると、各省庁が予算要望案で却下されていた案件を、復興支援という名目で流用して使っていたことを知る。

 これは、実際にあったことを物語にしている。復興支援に役立つということを頭につけ流用するのである。

 「反捕鯨団体の妨害活動対応費23億円、北海道の刑務所での職業訓練費3千万円、沖縄の道路整備六千万円、航空機設備費九十九億円、自殺対策三十七億円、NHK大河ドラマキャンペーン三億七千万円」など一兆円が使われていた。

 これに怒った加納は、官僚組織の改革を実行しようとする。しかし、国会議員は二世か官僚出身者ばかり。官僚出身議員が出身官庁とタッグを組んで改革阻止に動く。対決は熾烈だったが、加納が勝ち、改革が実行される。

 アルジェリアの日本大使館が過激派により占拠される。過激派の要求は、アルジェリア南部に展開する政府軍を支援するフランス軍の撤退。

 そして過激派は、撤退が受け入れられるまで、3時間ごとに拘束者を殺害。その場面を全世界に動画配信する。テロリストとの交渉ルートもないし、アルジェリア政府もテロには屈しないという姿勢。

 そして画面で日本人大使館員が射殺されるところが放映される。なすすべを日本政府は持たない。憲法九条で軍隊は持たず、交戦権は認められない。海外に自衛隊をPKO以外で派遣は認められないからである。

 追い詰められた加納は、自らが総理から身を引く覚悟で、自衛隊特殊部隊をアルジェリアに派遣する。日本人が4名殺害され残り日本人17名、現地人19名36名が人質にされていた。

 特殊部隊突入でさらに自衛隊員2名が殺害されたが、残りの大使館員は全員救出された。

マスコミも、議員の多くも、加納の対応に、日本を戦争に導くものとして一斉に非難。隣国中国、韓国も同じ論調で非難。

 国民もそれに同調するかと思われ、事実、国会周辺には毎日のようにデモが行われ、総理退陣の要求がなされたが、人数は200人程度だった。

 この物語。「国のかたち」がどうあるべきか真正面からとらえている。ズシンと重い小説である。

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