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小川洋子    「琥珀のまたたき」(講談社文庫)

 小川さんは、思春期の頃、「アンネの日記」に心を打たれ、作家を目指した。そして、今でも、創作の原点に「アンネの日記」がある。

 この作品はその原点「アンネの日記」を彷彿とさせる。

公園に散歩にでかけた母親と4人の子供たち。3歳の末娘が野犬に襲われ命を落とす。それで、残った子供3人は母親と、父が残した別荘に引っ越す。

 野犬はここでは魔犬と称され、どことなくナチスを思い出させる。だから、その時から残された子供3人は母親の命令で、本名を隠し別の名前を変えさせられる。長女オパール、長男琥珀、次男瑪瑙と。そして魔犬のえじきにならないために家から一歩も出ないよう、さらに話す声は極力小さくすることをと厳命される。

 そして、母親は昼間温泉療養施設で働き、子どもたちは別荘に幽閉された生活が始まり、それは6年半続く。

 電話も携帯もテレビも楽しいおもちゃもゲームも何もない。

私の子供の頃も同じ。それでも、子供というのは創意工夫の力が旺盛で、姉弟でいろんな遊びを創り楽しむものだ。我が家でも兄が車のナンバーの4桁の数字を使い、四則計算をして結果10になる遊びをさせた。早く10にした者が勝ちというわけだ。車が通るたびに、この遊びに熱中した。今でもその癖が抜けず、車のナンバーをみると無意識に計算を始める。

 父親の残した膨大な数の図鑑を使い、それをめくりながら質問をだし、即座に回答する。あるいはオリンピック出場選手になったつもりになり、インタビューを受けたり、子供たちで合唱したりと。

 また、琥珀の左目は、図鑑をめくるたびに、ある像がみえる。その像をページの余白に描く。

 こんな生活も、やがて水道の検針員に発見され、終止符を打つ。
オパールは逃げ、失踪する。琥珀は保護施設に収容される。瑪瑙は、一旦保護施設に収容されたがその後里子だされる。

 母親は、救出時、踊り場で首を吊って自殺する。琥珀は、母親の言いつけを守って、机の下に隠れていて、母親の死をしらなかった。

 検針員が声をかけるが、何の返事も無い。しかし、それは検針員の誤解だった。声を出してはいけないと母親のいいつけを守っていたため、耳を澄ましても聞こえないくらいの声しかでなくなっていた。

 3人の子供たちの日常は楽しいものだったが、常に恐怖がとりついている、厳しい生活だったことがわかり、胸が痛む。

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| 古本読書日記 | 06:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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