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米澤穂信   「さよなら妖精」(創元推理文庫)

物語の舞台は、人口10万人ほどの地方都市藤柴市。主人公の高校生守屋路行が、女友達である太刀洗万智と帰宅する途中、雨宿りをしている少女マーヤと出会う。

 マーヤは日本を学ぶために、2か月間の期限で旧ユーゴスラヴィア(物語ではユーゴスラヴィアは存在している)からやってきていた。

 ユーゴスラヴィアは第一次大戦後の1929年に独立して2003年まで続いた。国は、もともと6つの共和国から成り立っていた。
 スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、セリビア、モンテネグロ、マケドニアである。ユーゴに統一されても、それぞれの国は独立して個別に経済体制を敷いていた。

 ユーゴはパルチザンとして戦った偉大な指導者チトーにより国家は維持されてきた。しかしチトーが没してから、各国の独立機運が高まり、内戦が勃発して、国は崩壊した。

 物語は最初、マーヤと守屋、太刀洗を中心とした仲間たちの異文化交流が描かれる。街の名所旧跡を訪れたり、裏山に登ったり、伝統的祭りに参加したり。それなりに、文化、風習の違いや、あどけない純真なマーヤの好奇心一杯の立ち振る舞いが面白いのだが、それが延々と続き、こんな交流物語で終わるのかと少し辟易としていた。しかし、この交流で交わされる内容が、謎を解くカギになっていて、それならもう少ししっかり読み込めばよかったと後になって後悔した。

 滞在期限が2か月とせまり、マーヤはユーゴに帰る日が近付く。しかし、その時、ユーゴでは激しい内戦が勃発していた。守屋はマーヤに帰国することをやめるように迫るが、マーヤは帰りますと譲らない。

 守屋はぬくぬくと親の庇護のもと、成長してきた。しかし、内戦とマーヤをしり、ユーゴに関する本や情報を徹底的に集め、読み込み、現状の自分を脱するためにユーゴにマーヤと行こうとする。
 しかしマーヤはユーゴは今は観光でくるところではないと拒否される。守屋には「観光」と言われ強い違和感を覚えるが、それを跳ね返し、マーヤを説得する言葉が無い。マーヤにどんな気持ちでユーゴに来ても、それは観光でしかないことを見透かされている。

 マーヤはユーゴに帰ったら、必ずみんなに手紙を書くと約束して帰国したが、待てど暮らせど手紙は来ない。

 マーヤは自分の住んでいる国、都市をみんなに明かさなかった。そこで、守屋の推理が始まる。その国、都市を特定するために、長々と描かれた交流物語にヒントがちりばめられていたのである。

 そして、それが紛争で大量難民と死者を出している、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボであることをマーヤ帰国一年後に到達する。

 何が何でもサラエボに行こうとするところに、万智がやってくる。実は万智はマーヤから故郷の住所を聞いていて、手紙を書きその返事を入手していた。しかしそれはマーヤからでは無かった。マーヤはすでに首を撃たれて死んでいた。

 あれだけ多くのユーゴを知り学んだのだから、その情熱が燃えているうちに、どんな困難が待ち受けていても守屋にサラエボに行ってサラエボでマーヤの死を知ってほしかったと心より思った。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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