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石持浅海    「まっすぐ進め」(河出文庫)

 日常に起きる不思議な出来事の真相を主人公川端が解き明かす連作短編集。
また、この作品集は一方で、美しい恋愛小説にもなっている。

 主人公川端直幸には、同期で入社したが転職した黒岩正一という友達がいて、時々出会って飲みにゆく。黒岩には同じ会社で知り合った千草という恋人がいる。
 黒岩、千草カップルの紹介で、黒岩と同じ会社に勤める高野秋と知り合い、川端と秋は恋愛関係となる。

 黒岩と千種が結婚の意志を決め、黒岩が千種の実家にゆく。そこで、千種の母から、父から黒岩へと託された品物が渡される。

 実は千種の父は10年前急性白血病で他界している。

 黒岩に渡された遺品は、16本もフレームがあるがっしりとした傘だった。なぜ黒岩に渡されて品物が傘だったのか。また、千草には兄がいて、先年結婚をしている。遺品が兄ではなく、なぜ千草だったのか。

 黒岩が推理する。
「傘を結婚生活だと思うと、お父さんの考えがわかってくる。二人で一つの傘の中にはいる。それは一つ屋根の下で生活することを表しているんだろう。その屋根が安っぽい500円のビニール傘というわけにはゆかない。しっかりとした頑丈な傘でなければならないと。」

 確かに納得はできるが、それなら別に兄さんにあげてもよい品物、それがどうして千草に。

その時川端が「傘を開いてみるとわかるよ」と言う。
 黒岩が傘を開く。中から古びた写真が一枚舞い落ちる。
その写真は、千草と父が写っている写真。千草が中学生の時。しかも父は古い傘をしっかり千草にさしかけている。

 川端が言う。
「お父さんは、古い頑丈な傘で千草を守ってきた。亡くなっても、ずっと傘をさしかけ千草を守った。傘を開いた人が、お父さんからしっかり引き継いで、そこからは千草を守ってほしい。だから、遺品の傘とともに、千草を引き継いだのだ。」

 なかなか素晴らしい黒岩への贈り物だ。

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| 古本読書日記 | 06:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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