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有栖川有栖     「闇の喇叭」(講談社ノベルズ)

有栖川の、火村シリーズ、江神シリーズと並んで創られているソラシズシリーズの最初の作品。

 ソラシズシリーズは、第2次大戦が、現在のような終結のしかたをしないで別の終結の仕方をしたことで今とは異なった日本を舞台にしたパラレルワールドを描く。

 1945年8月、日本はポツダム宣言を受け入れ、天皇の終戦宣言を用意しようとしていた。8月以前は、アメリカ軍は、日本の多くの都市を空襲し、日本にはたくさんの死者がでた。しかし、その空襲は8月にはいるとピタっと止んだ。

 当時のアメリカ大統領トルーマンは日本が恐怖を抱いていたような本土上陸作戦を行うつもりは無かった。上陸して制圧するのは難しくないが、少なくとも多くのアメリカ兵が犠牲になることは間違いなく、それは避けねばならなかった。

 一方、戦争終了は遅らせたかった。日本の領土を狙って参戦してきたソ連に、日本に原爆を落とし、その威力をみせつけ、領土奪取をするとソ連がどうなるかみせつけたかった。

 それで、この物語は昭和20年9月6日に広島、9月9日に長崎に、止めは9月18日に京都に原爆を落とす。これで9月20日に玉音放送があり、戦争が終結される。
 この結果、北海道はソ連占領下のもとで独立。国境は津軽海峡に敷かれ、これ以降、日本と北海道独立後の日ノ本共和国とは、戦争終結協定は結ばれず、現在でも戦争状態にある。

 なかなか興味がわく前提である。

 この作品を読むと、戦後ソ連や北朝鮮、東欧諸国が上手くいかなかったのは、思想を一つで染め上げ、国の経済もその思想により国がコントロールする運営体制をとったことによると考えてしまう。

 戦前の日本は、思想は天皇崇拝で染め上げたが、経済は資本主義、民間にゆだねた運営体制をとっている。

 この体制は、自らの思想が唯一無二で正しいとして、国民だけでなく、他国に対してもその思想で染め上げようとする。これでは、どうしても戦争に突っ走りたがる。

 世界大国である中国が、戦前の日本の体制に類似しているように思うのは、私だけだろうか。

 作品では、今の日本は国家思想に従わない人間を逮捕して処罰する国になっている。その筆頭にあげられているのが民間の探偵。探偵業は法律で禁止されている。

 物語は隠れ探偵業をしていた両親、その一人娘の高校生の空閑純が、父親と危険な橋をわたりながら、殺人事件の真相を暴く物語になっている。母親は現在失踪中。父親も事件の真相を解明したところで、警察に逮捕される。残った純はその後どうなるというところで終了している。

 ミステリーとともに若者の成長物語にもなっている。

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