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綾辻行人    「最後の記憶」(角川文庫)

 アルツハイマー症候群は、幾つかの種類がある。アルツハイマーは一旦罹ると、病気の進行速度は抑えることはできるが、最後は必ず死に至る病気とこの物語では書かれている。

 そのアルツハイマーの中でも、最も恐ろしいのが「箕浦=レマート症候群」である。この病気にかかると、髪の毛がすべて白髪となり、印象の薄い記憶から順に消滅し、最後は幼いころの最も辛く、切ない記憶だけが残る。死ぬ直前には、その辛い記憶にずっと苦しめられる。

 このレマート症候群は、若年性アルツハイマーのひとつで、20代でも発症することがある。
 しかも、この症候群は、遺伝性の病気であり、先祖がこの病気にかかったことがあれば、子孫の半分が発症する。

 主人公の波多野森吾は大学院で航空力学を専攻する院生。母親の千鶴は、50歳の若さなのだが、アルツハイマーのレマート症候群に罹り、入院をしている。森吾には水菜子という妹がいる。ということは。2人のうち一人が、レマート症候群に罹る可能性が高い。

 波多野森吾は、いつ発症するか恐怖におののいている。
そんなある日、幼友達の唯に偶然出会う。唯はすでに社会人なのだが、2人は大学が同じ。
唯は、恐れていてもしかたないと、森吾を森吾の母親の生まれた町に連れ出す。

 ここで生産をやめて長い間放置されていた香水工場をみつける。実は、この廃工場には、扉をあけはいると異界がある。

 そこは、今日しかない世界。昨日も今日、今日も当然今日、明日も今日。そこに入れば、今日が永遠に続く。そこに森吾は入ってしまう。

 母には二の腕に大きな傷があった。そこは1956年の世界。
たくさんの子供たちが遊んでいる。そこで森吾はカッターナイフを持ち、子供たちを切りつける。

 森吾は知る。母の二の腕の大きな傷は自分がつけたのだと。そして、母の残った最後の苦しい記憶は、森吾にナイフで傷つけられたことだと。母の今日は、森悟が傷つけた日が今日となって毎日続いている。

 この部分の描写が恐怖感をそそる。一級のホラー小説である。

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| 古本読書日記 | 06:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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