FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

桜木紫乃     「霧」(小学館文庫)

 私が今住んでいる地方都市、長い間国会議員を輩出。その議員が引退して、別の議員が引き継ぎ彼も長い間国会議員を務めていた。
 最初の国会議員は、彼の功績を称えて、市役所前に銅像まで建っている。

国会議員にもそれなりに力はあったのかもしれないが、市を牛耳り、利権を全部わが物にしていた一族がいた。

 市長をはじめ、主な市関連団体のトップはその一族が占めていた。更に、その一族は建設土建業と輸送業を持ち、すべての公共事業が一族の企業に落札するようにしていた。

 民主党が好きというわけではないが、今は民主党系の市長に変わり、何回か選挙をやったが、一族系の候補者はことごとく敗退し、一族支配はかなり無くなってきている。

 この物語は、昭和30年代後半から40年代はじめまでの北海道根室を舞台にしている。

昔からの名門企業河之辺水産には3人の娘がいた。長女は、根室の輸送を牛耳っている大旗運送の長男に嫁ぐ。次女はそんな政略結婚に反対し、自分の意志で生きることを志し、何と15歳で芸者の世界に飛び込む。更に三女は、お金で支配している信用金庫の長男と婚約させられている。

 次女は自由に生きるはずだったのだが、結局暴力団でもあり、建設業界を牛耳っている相場組組長と結婚する。

 物語はすべて次女視点で描かれる。次女は、長女の生き方を嫌っている。長女は夫を国会議員に当選させ、根室で権力を増大し、根室を牛耳る、そのために、妹の3女を金貸しに嫁がせようとしている。

 そんな視点から描かれるから、長女は悪の源のように思われるのだが、社会は次女が見ている、経験していることしか描かれないから、本当に長女が悪い人間なのかはわからない。
 長女には長女の経験している社会があるのだから。

しかし、彼女たちの意志、思いとは全く関係なく、みずからの意志は殺され、地方都市の濁流の中に、3人の女性は飲みこまれていく、救いようのない世界は、視点はだれであれ、変わらないということは物語は語っている。

 現在でも、こんな世界、地方都市は確かに存在している。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 05:44 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT