FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

高村薫     「冷血」(上)(新潮文庫)

カポーティの傑作「冷血」は実際にカンサス州で起こった、農場主一家4人の殺害事件を捜査関係者や加害者2人を含め事件関係者に綿密に取材し、事件に至る過程から、加害者が死刑に至るまでを描いている。

 このカポーティの作品を深く読み込んで、高村は、同じように歯科医家族4人の殺害、加害者も2人の事件を創造して、綿密に事件に至るまでの過程、捜査、裁判、死刑に至るまでの過程を描く。カポーティの作品を参照しているとはいえ、自らの創造力、作家力を十分に使い、難しい過程を描き切ったことは称賛に価する。

 作品はまず、事件が起きる過程を長く描く。

裏就職サイトにすぐお金が手に入るということを、就職情報を載せた井上克美、それに即応じた戸田吉生。

 2人で相談してATMを襲い、金を奪取しようとするが失敗。その後、井上がパチスロに凝っていたので、景品交換所を襲うとするが、警官がいたため断念。それで、コンビニに対象を切り替え現金を奪取。2軒襲うが、一軒6万円程度の金しか手に入らない。

 そして町田の住宅街で、強盗に入っても家にはお金は無いだろうと思える歯科医の家にはいり、両親と子供2人の4人を殺害する。

 この時、キャッシュカードを手に入れ、暗証番号を母親を脅し聞き出し、それにより、その後16回もATMにゆき1200万円のお金を引き出し、井上と戸田で2分して600万円ずつわけあう。さらに、貴金属800万円余を手に入れる。

 ここまでが第一章で、いよいよここから警察の捜査が始まる。

高村は、一気に犯人逮捕をさせないで、捜査の経過の在り様を想像して詳細に描く。

 現場検証。現場付近の地取り。歯科医やその家族と社会の人間関係捜査。ATMの防犯カメラ解析。カメラに映った車の捜査。歯科医のカルテの調査。犯人の足跡から履いていたと思われる安全靴の入手経路捜査。

この綿密な描写、読者は犯人を知っているため、結構いらいらする。
結局、犯人が使用した車から、井上、戸田が浮かび上がり逮捕に至る。

 この物語が不可思議なのは、例えば戸田は神戸で事件発生後捕まるのだが、その時の所持金が558万円。つまり3か月で42万円しか使っていないこと。しかも、捕まったときには、新聞配達人の職についていたこと。

 お金は必要ではなかった。それなのにどうしてコンビニを襲ったり、4人も人殺しをしたのか。しかも、殺害、強盗計画を綿密に練り上げたわけでなく、殆ど行き当たりばったりに事件を起こす。

 本当に不可解。この疑問を抱いて下巻を手に取る。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ




| 古本読書日記 | 06:10 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT