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篠田節子    「蒼猫のいる家」(新潮文庫)

 動物と関わるときの、人間のあほらしさ、愚かさを描きだす作品を中心にした短編集。

ペットブームなのだろう。最近テレビで動物を中心に据えた番組をよくみる。その際、ペットに溺愛して、ペットは今こう思っている、こんなことをしたがっていると、ペットを擬人化して演出しているシーンを多々見る。

 私の家では犬、猫ともに二匹ずついる。どのペットも可愛い。しかし、ペットが人間のように、あるいはそれ以上に考え、気持ちを表現する泣き声、表情を創るとは思えない。

 犬でも猫でも、その本能で行動していて、人間が思いいれているような複雑な行動はしていない。
 この作品集も犬、猫など動物が登場する作品がいくつか含まれているが、篠田さんは、動物に感情移入せず、動物のもつ特質を冷静に、客観的に描き出し好感が持てる。

 どの物語も篠田さんらしい素晴らしい作品に仕上がっているが、いつ読んでも篠田作品で感服するのは、会話の部分の表現にリアリティがあるところ。

 収録作品「イーラー」から。ファミレスでの社長と接待を受けた邦夫とのの会話。ちょっと年代が上の男の女性に対する評価が生き生きとなされている。

 「うちのなんて、あれは女じゃなくて、カンナですね。そう、命を削るカンナだね。疲れて帰って、女房の顔みてまた命が削られる。女房でなけりゃいいだろうと思ったら、若い女だって同じですよ。頭でっかちで、要求ばかりが多い。気をつかってやってこっちが大汗かいてサービスして、それで当たり前みたいな顔でふんぞりかえられる。おまけにバックだ服だとねだられて別れてみれば、財布はかるく心は重くってことになる。体を癒してくれて、一緒にいると明日への活力が体の底からわいてくる、そんな女はもういなくなってしまったんだね。いつの間にか、女はこちらが気力を十分にして奉仕するものに変わってしまった。
疲れた男なんぞ、ふん、と鼻先で笑って足蹴にあれるだけで。」

 「うちのだって似たようなものですよ。女房に命を削られるなんて我々の世代じゃあ当たり前の話ですからね。癒してくれと言おうものなら、甘えったれるなと一蹴されて終わり。一言いえば三言なんてものじゃない、二十倍くらいになって返ってきますよ。だからと言って外の女だって、社長の言うとおり、癒してくれるわけじゃない。そりゃすっきりはしますよ、物理的には。しかし充実感だの活力だのくれる女はどこ探したっていやしない。なんだかんだと言っても結局は金、みたいのが見え見えで。女送っていった帰り道なんか、俺。いつまでこんなことやっているんだ、げっそり空しい気分になったりして。」

 切ないねえ。でも、飲み屋で隣の席から、今にも聞こえてきそうな会話だ。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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