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我孫子武丸    「殺戮にいたる病」(講談社文庫)

東京や横浜でホテルに連れ込まれつぎつぎ女性が、殺害される。しかも、死体から乳房や女性器がえぐり取られ持ち去られるという猟奇事件が起きる。

 物語は犯人である稔、その母親である雅子、それに現在は退職しているが元刑事の樋口の視点、3つの視点で進む。

 最初に犯人の家族構成が示される。祖母、その子の夫と義娘の妻、それに息子大学生、そしてその妹、娘の5人家族。しかし、それぞれの名前は明らかにされない。

 そして、母は、息子の部屋を探索し血のついた肉体の一部や、SEXを撮影したビデオを発見し、息子が事件の犯人ではないかと疑う。

 母親雅子の独白の部分には息子との表現はあるがそれが稔だという表現は一切無い。しかし、稔の殺害場面と、母親のそれに呼応した独白場面が対で描写されるため、読者は完全に雅子の息子は稔だと思ってしまう。

 私など、純粋で誠実な人間のため、完全に作者安孫子にだまされた。

しかし、途中で、これ変だなと読み返した部分が一か所あった。稔がめずらしく大学を休むという。そこで雅子が「どうしたの」と聞く。
 稔が答える。
「・・・ちょっと熱っぽいから。どうせ授業は一つしか無かったし、前期は皆勤した講義だったし。一回くらい休講したって構わないさ。」
 学生がさぼるのに、休講したって構わないなんて言い方は変だなと、2回読み直した。休講は講師が使う言葉だ。その時、我孫子のこの小説は雑だな。こんな表現はあり得ないだろうと少し作者を卑下して読み飛ばした。

 幻惑されるのは、母という存在。祖母も雅子からみれば母だし、息子、娘からみれば雅子は母。我孫子はこの母をどっちの母を指すのか示さないこと。手がこんでいる叙述トリックを使った。

 そして最後数行だけで、物語はとんでもないドンデン返しを起こす。
何と、犯人稔は父で大学助教授、最後実母を殺害する。この時祖母の容子であり、最初に犯人をみつけたのが、大学生の息子信一であると2人の名前が明らかにされる。

 我孫子のこの作品は叙述トリックを使用した日本で最高傑作と位置付けられているそうだ。

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| 古本読書日記 | 06:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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