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中村文則     「A」(河出文庫)

 大戦末期、原爆が落とされたり、大空襲で大量の日本人が本土で殺されていることを、戦場にいた兵士たちがすでに知っていたらどうだっただろう。

 多分、殆ど知っていただろう。そして、それでも戦場に残らされ、戦死するのが定めだろうと兵士たちは観念していただろう。
 もう戦場では、天皇のために命をささげるなどと考える兵士はいない。

そんな時、Aという兵士の前に、どろまみれの貧しい中国人の男が捉えられひきずりだされる。

 Aは刀を握らされている。そして上官4人が見張っている。その刀を振り下ろし中国人の男の首をはねろと命令されている。しかし、人間を殺すことはできない。刀が動かない。

上官が言う。
 「かしこくも、我々は天皇陛下から部下をお預かりしている。お前のように人を殺したことのない人間を前線にはだせない。人を殺せないと、お前も、お前の部下も全て死ぬことになる。これは理不尽な命令ではなく静かなる要求である。このシナ人を殺して自分を変えねばならない。臆病者が一人でもいれば全員に伝わる。上層部からは次々命令がきている。
我々は変わるしか道は無いのだ。」

 Aは刀を振る。しかし、首のところで止まってしまう。
それを絶対許さない上官の視線がAを突き刺す。もう首をはねないと自分が殺される。
追い詰められたAはそこで思い込む。殺害するのは日本人でなく、シナ人だ。このシナ人めと声をはりあげ中国人の首をはねる。

 上官はよくやったと褒める。そして言う。戦争が終わるとこの虐殺が非難される。しかし中国は虐殺人数を大きく膨らます。そして日本はそんな虐殺は無かったという。いずれにしても、今日の首切りが表にでることは無いから心配するなと。

 朝鮮人の女性が慰安所に連れてこられる。Bは、徴兵された直後に結婚し、新婚生活を味わうことも無く朝鮮の戦場に出兵させられる。

 日本は戦争で破壊され、大量の人々が殺されている。自分も最後日本に帰ることはできず、この朝鮮の地で死ぬことになる。

 もう妻のみならず、女性を抱くことはできない。そんな思いが慰安所の女性と7回も性交させた。

 物語の視点、戦争体験の無いのに中村は斬新だし、内容もずっしりと重い。

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