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中村文則   「悪と仮面のルール」(講談社文庫)

 久喜大財閥の子供として生まれた文宏は、父が60歳のときに生まれた子。その時、父親は孤児施設から香織という子を養女としてもらう。文宏と香織は同い年の子として育てられる。

 文宏が11歳になったとき父親によばれ、「久喜家には邪となる人間がいる。そして文宏はその邪である。そのために、文宏はこの世界を否定したくなるような地獄、圧倒的に無残な地獄に出会うことになる。その時香織も重要な役割を担う。

 その地獄は15の時一度、16の時二度現れ、18の時その真実を知ることになる」と告げられる。

 香織と文宏は親密になり、やがて体の関係を持つ。ところが、ある日から香織が近付かなくなる。それは、父親が香織を全裸にして嘗め回すように体をみつめることを始めたから。

 それを知った文宏は、父親を地下室に閉じ込め、食べ物を与えず、餓死させる。これが父親が予言した文宏15歳の時。

 ある本で読んだが、あらゆる生物は、その種の保存のために、一部に共食いのようなこともするが、本質的に同種の中では殺しあうということはしない。しかし、人間だけは、人同士で殺しあうことをする。

 文宏は愛する香織に対する父の悪辣な行為とともに、父を殺したことに苦悩する。それで、自分自身を滅亡させようと、新谷弘一という男そっくりに整形をして、新谷として生きようとする。これで、文宏はこの世から消滅したと文宏は考えた。

 しかし、人間をどう変えても、人殺しをした事実が、忽然と彼の心に浮かび上がり、彼を悩まし狂わせる。

 戦場で、敵の人間を殺す。あるいは、味方の人間が相手に殺される。こんな場面に遭遇すると、その人間は死ぬまでずっと苦脳し、トラウマは癒えることはない。

 原爆ができ、殺しあう場面をみることなく、戦争ができるようになった。
生物の摂理、本質である、同種での殺し合いは、苦悩、悪夢を引きずるが、核兵器は引きずらない。その代わり、人間は滅亡するための手段を手にいれた。

 この作品を読んでこんなことをズシンと感じた。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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