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中山七里    「スタート!」(光文社文庫)

黒澤、小津と並び称される映画界の巨匠大森が4年ぶりにメガホンをとり「災厄の季節」なる映画を撮る。物語は大森、そのスタッフとプロデューサーサイドとの対立を背景に、撮影現場で、傷害、殺人事件が3件起きる。対立と事件が軸になり展開する。

 「災厄と季節」のストーリーは判然とはしないが、主人公の若者が、殺人事件を起こし(夢の中のような気もする)、最後に殺害されるようだ。この若者が身体障碍者であることで、人権団体から障碍者差別だと強い抗議が起こる。これに対し、自らも老年により車いす生活をしている監督の大森が反駁する。

「障碍者を事件の容疑者にするとはなにごとだと。障碍者は殺意をもったら悪いのか。他人を憎んじゃいけないのか。恨むのだって、憎むのだって、まともな人間のすることじゃないか。
 体に障害を持っている人は確実に存在する。視聴者が見たら不快になるからと見せない。お前らみたいなのが抗議するから自粛するといって画面から消し去る。お前らのしていることは障碍者を護ることではなくて、障碍者の当たり前の思いを世間から隠してしまうことだ。」

 この大森の言葉に加えて、中山が物語の中で言っていることが、納得感があり重い。
「人間が心底残忍になれるのは凶器を手にしたときではない。大義名分を手にしたときだ。大義名分と己れの正義を手にした者は、誇らしげに他人を刺す。相手が言葉を持たぬ者でもかよわき者でもかまわない。己を突き動かす熱情が冷めるまで延々と牙をむき爪を立て続ける。」

 とりわけネット時代では、相手を叩きのめすまで牙をむく傾向が強くなる。

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| 古本読書日記 | 06:03 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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