FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

堂場瞬一   「黒い紙」(角川文庫)

物語は今から30年前、亡命希望の旧ソ連の兵士のパイロットが操縦する最新鋭戦闘機Su-25MMが島根の宍道湖に不時着するという事件から始まる。その不時着に大手商社テイゲンの糸山会長が旧ソ連のスパイとしてこの事件に関与していたという脅迫状がテイゲンに届く。

 この宍道湖戦闘機不時着事件は、1976年に函館空港に旧ソ連のベレンコ中尉が操縦する最新鋭戦闘機M-G-25が不時着。その後真相は何ら解明されず闇に消え、ベレンコ中尉は希望通りアメリカに亡命した事件を思いおこさせる。

 物語は作者堂場の推理になり、ロシア、アメリカを舞台に事件の陰謀、真相が明らかにされる国際謀略小説になるかと思って読み始めたら、全く中味は違った。

 この脅迫状について、テイゲンは警察に届けるわけにはいかないため、会社で契約している危機管理会社「TCR」に解決を依頼した。

 「TCR」の社長光永は、刑事を最近やめ、「TCR」に光永が引っぱった主人公長須恭介にこの解決の指示をする。その直後に犯人からテイゲンに10億円を要求する脅迫状がくる。

 物語は、糸山会長の横暴な権力の振る舞いで犠牲になった社員の恨みに基づいた脅迫。社内の派閥抗争が原因だったことが明らかにされる。

 また「TCR」はクライアントであるテイゲンのために活動せねばならない。社会不正義を暴くためにあるのではない。しかし、主人公長須はテイゲンの影の部分をみると、どうしてもそれを暴きたくなるし、そのための行動をとりたくなる。「TCR」の企業利益と正義感とのバランスがうまくとれない苦悩が一貫して物語に流れる。

 30年前糸山がソ連の亡命兵からソ連開発の最先端のCPUを入手。それを製造して販売しようと目論んだことが、脅迫として成立することなのか疑問が残る。

この脅迫で糸山は失脚する。そして糸山会長の対立派閥の殿山副社長が社長になる。これでテイゲンが生まれ変わるとはとても思われない。対立派閥が単に浮上しただけで、同じことは繰り返すだろう。

 何か、入り口は大きな国際事件に思えたが、中身は小さく、つまらなかった。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

| 古本読書日記 | 06:25 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT