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原宏一    「ヤッさんⅢ 築地の門出」(双葉文庫)

 食に対して卓越した知識と豊富な人脈で、ホームレスにも拘わらず、築地で働く人々の力強い相談相手であり、難問を解決するヤッサンシリーズの第3巻め。

 今回は今をときめく市場が築地から豊洲に移転することで生じる業者や、食堂の悩みがテーマとなる連作短編集になっている。

 2編目の「モーニン東京」。最近流行のテレビでの卓越した料理人や美味な料理を提供するレストラン紹介番組についての作者原の見解が鋭く面白い。
 カズさんというテレビ局の中年ディレクターにヤッサンの弟子タカオが聞く。そのときのディレクターの回答が原の考えだろう。

「カズさん、料理番組ってやったことがある?」
「ないな。料理人は使ったことはあるけど。」
「テレビに出てる料理人てどういう人なの」

「まあろくなもんじゃないな。テレビってやつは、料理の味よりキャラが大事なメディアだからさ。料理はそこそこでもキャラがたってる奴を優先してだすわけよ。だからよく聞くだろう。テレビで有名な店に行ったら、ろくでもなかったって。」

「けど美味しいって評判になって繁盛している店もあるでしょう。」

「世の中には、テレビによくでてる料理人の店って言われただけで、美味しく感じちまう人がたくさんいるんだよ。人は誰しも哀しいかな、イメージというものに弱い。イメージが刷り込まれてしまうと、たとえ途中で味が落ちたとしても、イメージに引きずられて、脳が美味しいと思い込んでしまう。味覚はそれほど感情に左右されやすいんだよ。」

「それでも、まともな料理人だっているんでしょ。」

「いやもちろんそういう例外もなくはないが、ごくまれな話でね。もともと料理に腕がたちキャラもたっているからとテレビでひっぱりだこにされた場合、本人がかん違いしてしまうんだな。料理番組ばかりじゃなくて、クイズ番組やバラエティ番組やらにも引っ張りだされ、チヤホヤされて楽に稼げる方へ流されちまう。厨房で地味に努力していることが馬鹿馬鹿しくなって、店も料理も弟子まかせになる。その先がどうなってしまうかわかるだろう。
 やっぱしテレビって怖いよね。最初はみんな店の宣伝のつもりなの。で、その宣伝で、一時期ワっとお客がおしかけるんだけど、そんなお客がいつくわけないじゃない。ほどなくしてお客がひきはじめたっと思ったら、いつのまにか店がたちいかなくなって、あんなに人気だった店がつぶれてしまう。そんな店がどれだけあることか。」

 うーん、なるほど。料理、食べ歩き番組はこれからは眉につばをつけてみないといけない。

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