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南英男   「助っ人刑事」(徳間文庫)

昭和27年、社会が騒然とするなか、破壊活動防止法が制定され、それとともに公安調査庁が設置された。公安調査庁には1000人を超える調査員がいるが、逮捕権はない。

 破壊活動団体の動きを調査し、破壊犯罪を未然に防ぐことをその役割としている。設置当時は、過激デモを中心に、破壊殺人事件が頻発していた。最近ではオウム真理教が起こしたサリン事件や三菱重工ビル爆破事件はあるものの、殆ど破壊事件は起きておらず、調査庁の予算減額の話や、調査庁そのものが不要ではないかという話が国会議員の一部で起こっている。

 この作品は、オウム真理教事件のその後を彷彿とさせるつくりになっている。

「マントラ」という新興宗教組織が、有毒ガスを使い殺傷するという事件が起き、長い裁判の結果、教祖の木本をはじめ13人に死刑判決が下り、2018年に2回にわけ死刑が執行される。

 「マントラ」は「プリハ」という新しい団体に継承されたが、それに不満を持つ城島が「魂の絆」を設立。さらにそこから「幸の泉」が別れる。

 この3派に、木本の家族の争いが加わり、死刑になった木本の遺骨を受けるべき人がはっきりしなくなり、遺骨は刑務所に保管されたままになっている。

 3派はそれぞれ家族も巻き込んで、この遺骨の争奪にしのぎをけずる。遺骨が争奪できれば、神格化されている木本教祖を奉ることができ、圧倒的に多くの信者を獲得できるからである。

 公安調査庁の人間は、こんな事案をしょっちゅう目の当たりにし、そのたびにとんでもないお金が動くことも知っている。しかも、同じ調査庁の人間関係より、こんな組織の人間との関係が強くなり、ズブズブにはまってしまう調査庁員もいる。

 この物語に登場する椿原調査員は、新興宗教団体の城島と組み、そこから大金をもらうことを条件にして、刑務官を手下にして、木本教祖の遺骨を収奪、他の死刑囚の遺骨を掘り出し入れ替える。

 狂暴集団と規定している団体を調査している調査員。よほど強い正義感と職務にたいする自覚が無いと、お金に目がくらみ、社会悪の団体にとりこまれてしまう。こんなことはよくあることのように思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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