FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

村上龍    「半島を出よ」(下)(幻冬舎文庫)

村上は、現在の日本について、幻滅と危機感を強く感じている。更に村上はその幻滅国家に政治家も含め誰も気が付いていないことに強烈な怒りを抱いている。

 それがどういうことなのか、具体的に知らしめてやるという深く熱い動機を持ってこの作品を創り上げている。

 物語は、北朝鮮のコマンドが福岡に潜入、ヤフオクドームの観客を人質にして、福岡を占領してしまうというところから始まる。たった9人のコマンドとその後やってきた500人の兵士にまったくなすすべもなく、福岡が占領されてしまう。

 その時、日本政府のとった政策は、福岡を含む九州を完全封鎖すること。九州からの人、物、金の出入りを完全に止めることである。
 ということは、九州を日本政府は捨てたということである。

物語は奇想天外に思われるが、内容は実にリアリティがあり、生の現実が目の前で展開しているように進む。
 それを可能にしているのは、村上の膨大な現実の調査研究と、その完全な把握、そして見事に現実を文章にして反映させたことによっている。

 北朝鮮の軍の組織。兵士の有り様。無慈悲な兵士公開処刑と、福岡で逮捕拘留した日本人の金持ちに対するすさまじい拷問の描写。

 国家安全保障会議に参集する、担当大臣だけでなく、すべての官僚の肩書まで細かく描かれる。こんなところまで描くから1000ページも超える作品になるとその時は思うのだが、その細かさに知らぬ間に引き入れられてしまう。

 更に、この始末ができるのは、政府でも自衛隊でもなく、イシハラグループといホームレスの一団。ゆっくり考えればまったくありえない空想話なのだが、この過程の描写がリアルで実に細かい。

 北朝鮮の司令部が入居しているシーホークホテルの構造の徹底的調査。どこに爆発物を仕掛ければ、ホテルが崩壊、それも大濠公園の北朝鮮兵士居留区に倒れ、居留区を殲滅できるかの分析。そして綿密な計画と実行。実に多くのページを割いて説明描写されている。

 この物語の成功は、村上の綿密な調査によって成されている。

リアリティが無いと思ったのは、福岡占領は金首席によってなされているにも関わらず、占領後金首席の司令、指示がなく、コマンドトップの裁量で占領政策が実施されてゆくところ。
そこだけ。

 それにしても、村上は九州は日本から独立すべきと思っているのではないかと読了して感じた。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ




 

| 古本読書日記 | 06:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT