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村上龍   「限りなく透明に近いブルー」(講談社文庫)

言わずと知れた村上を世にだした処女作でかつ芥川賞受賞作品。芥川賞受賞作品、単行本として最も売れたのが又吉直樹の「火花」。しかし単行本、文庫本合算では圧倒的な販売数を誇るのがこの作品。

 村上春樹の作品を読んでいると、自分と同じ社会に村上春樹は住んでいないのではないか、全く違った社会に村上春樹はいるのではという思いがいつもする。

 この作品も、登場人物は我々の世界とは異なる世界に住んでいる人たちのように表面的には思える。しかし、この作品は、客観的に冷徹にこちら側から活写している表現になっているため、異なった世界を描いているようには感じない。

 物語は米軍横田基地のある福生。ここで米軍専用の元住宅であるハウスで、主人公のリュウ他、複数の男女と米軍人たちがコカインやLSD,その他のドラッグを浴びるほど乱用して、発狂状態で乱交をする世界を描く。通称パーティと呼ばれている。

 このパーティは毎日、それも延々と長い時間開催される。麻薬を大量に摂取するため、狂乱のSEXを超え、吐瀉物が散乱。そして、必ず血が流され、病院に運ばれる人間がでてくる。このパーティを描写する村上の表現はリアリティがありすさまじい。

 狂ってしまうと、警察が踏み込んでも、女の子は裸を隠そうとはしない。そのまま真っ裸で床に横たわっている。
 このパーティのメンバーはほぼ同じ。いつも、塊となって、狂乱、騒乱し、叫び、会話行動をする。その塊は社会から離れ、勝手に別世界のようになって転がっている。

 しかし大量の酒や、麻薬はただでは手に入らない。金は我々の世界で働いて手にいれなければならない。それが続くと、塊の中には、このままでは人生が終わってしまうという考えが大きくなるメンバーもでてくる。そして塊を抜け出そうとする。

 そんな時、主人公のリュウは、黒い夜そのもののような巨大な黒い鳥をみる。窓の向こう側から嘴で窓をつつくが、その姿は大きすぎ全体はわからない。足で踏みつぶされた蜘蛛は何が自分を踏み潰したのかはわからない。しかしリュウは、自分を襲って潰そうとしているのは巨大な鳥であることがわかる。

 その鳥こそが、私たちが住んでいる世界。そしてリュウたちの塊だって、我々の世界の一部。

 襲ってくる巨大な鳥にリュウは強く願う。やさしく自分を包んで欲しいと。

村上龍は我々と異なった世界にはいない。我々と同じ世界でもがき苦しんでいる。

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| 古本読書日記 | 06:26 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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