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村上龍   「カンブリア宮殿 村上龍の質問術」(日経文芸文庫)

 テレビ番組「カンブリア宮殿」にゲストとして登場した主に、会社経営で大きな成功を収めた経営者人たちへのインタビューを収録した作品。

 経営の成功話や、秘訣、エピソードは何か文字にすると、感性が私に無いのか、決まりきった常套句ばかりで、興味がわかなかった。その中で日本電産の永守社長の話がおもしろかった。

 昭和28年。戦争の残滓が残り、日本中が貧乏だったころ、洟垂れ小僧だった永守が友達の家に遊びに行く。

 貧しい時代で、貧しい服を着て遊びに行く。ところが、招いた彼は、詰襟を着て、スイス製の時計をはめて、革靴をはいていた。座敷に通される。そこにはドイツ製の模型列車が走っている。

 3時になるとお手伝いさんが「お坊ちゃまおやつの時間ですよ」と白い三角形のものを持ってくる。「それは何?」と聞くと「きみ、チーズケーキだよ」と教えてくれる。金持ちはケチだ。白い三角のものは一つしか出してくれない。彼にお願いして、ちょっぴり食べさせてもらう。めちゃくちゃおいしい。

 下に降りたら、今度はジューっと音がする。何かあかいものを焼いている。「それ何?」と聞くと、「なんだこれも知らないのか。これはステーキというものだ。」

 それで、最後に彼に聞く。「おまえの親父は何をしているの」と。「社長だよ」と答えが返ってくる。社長はどういうものか知らなかったが、小学3年生だった永守は大人になったら社長になると作文に書いた。

 永守は、京都でバラック小屋に2人を雇い工場を始めた。取引をしようとしているお客が京都にやってきて、「工場は?」と聞く。でも、京都の名所旧跡を連れまわすだけで工場には連れていかない。帰りの時間は決まっているので、それまで引きずりまわす。とてもバラック小屋など見せられないから。中にはしつこい人もいて、工場を案内せざるを得ないときがあるが。工場を見せると絶対取引はしてくれなかった。

 村上はこのエピソードの前に、ナチス強制収容所に収容されて生き残ったフランクリンの作品「夜と霧」をひいている。
 私も心に残っていたが、収容所で生き残った人は、剛健な体の人ではなく、常にユーモアを愛し、話せる人だったと言う。
永守の話は、人を励まし、なごましてくれるユーモアがある。

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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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