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垣根涼介    「ゆりかごで眠れ」(下)(中公文庫)

日系2世のリキ・コバヤシ・ガルシア、兄が殺害され、その後を継いでコロンビアでコカインを扱うマフィアのボスになる。メンバーのパパリドが敵対する組織から売られ日本の警察に捕まる。

 リキは厳しい統制をメンバーには強いるが、メンバーが拘束された場合は、必ず救出することで組織の結束と信頼を強くしている。

 この物語は、日本で逮捕されてしまったメンバー パパリドをリキが日本に乗り込み、日本の警察から奪還するまでを描いた物語。

 コロンビアは鉱物資源が豊富で、南米では比較的裕福な国であってもおかしくない。でも、そうならない。裕福な国なのだが、その金額の4割はコカインの密輸出で稼ぎ出している。そして、国は権力者と反権力の戦いが年中繰り返され、膨大な数の死者を生み出している。

 リキの両親や兄弟も殺戮、闘争などに巻き込まれ亡くなっている。

 この物語には3人の、自分は自殺や誰かに殺されることが運命づけられていると思いつめている人たちが登場する。

その一人が貧民街育ち主人公のリキ。そこから逃れることは不可能。虫けらのように扱われ、殺されるか死んでゆくしかしか道は無い。たとえ、悪の裏道をのし上がることができても、いつか殺されるしか道はない。リキは覚悟している。

 二人目は悪徳刑事の武田。麻薬密売組織や暴力団に入り込む。事件が起きても組織のために揉み消す。そのことによりお金を収奪したり、或いは警察幹部のために、暴力、麻薬撲滅運動のときには、組織、暴力団を説得して、事案を提供させる。
 警察の中では、誰もが武田の悪徳ぶりを知っている。だから、誰も声をかけてこない。で、いつかは身内の公安に摘発され、逮捕され人生が終わることを覚悟している。

 それから、その武田と不倫関係にあった刑事若槻妙子。不倫は警察では誰もが知っている。だからつまはじきにされる。しかも、武田とは添い遂げられない。それで警官を辞職する。
 しかし、警察を辞めても、すべきことは見いだせないし、相談できる人は一人もいない。生きていても仕方ないと思ってしまう。

 絶望感が、一貫して物語に漂う。そして、そのまま武田は口内で銃を発射、リキはパパリドを奪還時に警察から撃たれ死亡。その絶望感の通りに物語が進むのは、発想が垣根にしては凡庸。

 ただ、最後にリキの幼い養女カーサの運命を妙子にリキが託すところに希望の光があるのか。しかし、ゆっくり考えても妙子、カーサの未来も決して明るいとはいえない。

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| 古本読書日記 | 05:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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