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道尾秀介   「笑うハーレキン」(中公文庫)

人生の大成功をおさめた人は、記憶は栄光の道を歩んできた輝かしいものばかり。しかし、多くの人は、もちろん楽しい記憶もあるかもしれないが、失敗、躓きが今の自分を表しているというような、失敗の塊が記憶に残る。

 特に、この物語のようにホームレスに落ちてしまった人たちは、失敗、躓きの記憶を嘆き、周りに語っても、それで明日が劇的に明るくなるわけではない。だから、みんな本質を隠して、仮面をかぶりながら生活する。

 家具製造会社を経営していた主人公の東口。最大手の取引先が倒産、更に息子を事故で失い、その一年後に失踪した妻から離婚届が送られてきて、絶望してホームレスに加わり、家具の修理をしながら暮らす。

 その東口が、商売用の軽トラにのると、必ず助手席に亡霊のような人が乗っている。そして、東口の魂を深く傷つけるようなことを言う。東口は、今のみじめな自分になったのは、取引先の社長の井澤が計画倒産をして、しかも妻が失踪したのは井澤のところに行ってしまったことが原因だと、井澤と妻を憎んでいる。

 この東口のところに奈々恵という若い娘が働かしてほしいとやってくる。もちろん、給料などとても出せないからと断るが、懸命に頼み込んでくるので、一緒に仕事をする。
奈々恵もホームレスとなる。奈々恵は幼い頃事故で片足に治癒できないけがをして、足を引きずって歩く。

 この奈々恵が、世界を回ってきて帰ったところだと言い、世界中の話をする。するとホームレス仲間のジジタキさんが、奈々恵に奈々恵が行ってきたという中国の話を懸命に聞く。
奈々恵も中国のことはよく知っていて、ジジタキさんは感心して聞き入る。

 そのジジタキさんがある日突然失踪して、一週間後にまた戻ってくる。そして次の日川に身を投げ自殺する。
 どうしても中国に行きたくなって、悪の組織に誘われ、中国から得体のしれないものを運ぶ仕事をした。悪の手先の仕事をしたことに、絶望して身を投げたのだ。

 実は奈々恵は、家をとびでて、最低の暮らしをしていて、とても世界旅行などできる人間では無かった。だけど、皆には嘘を言って、自慢したかった。

 東口の隣にいつも出現する亡霊、疫病神は実は東口の本当の魂だった。
東口は、ジジキタさんの遺書を読んだり、いろんな事件に遭遇して、自分がこんな状態になったのは、息子を亡くしたことと、妻を愛していたが、それに報いれなかったからだと心から思う。そして、そのことを隠さず生きていこうと決意する。その瞬間から亡霊、疫病神はでなくなる。

 暗いストーリーなのだが、ホームレス仲間が楽しく、明るく、物語は愉快な色調に仕上がっている。道尾の腕が冴えわたっている。

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| 古本読書日記 | 05:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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