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青山七恵    「繭」(新潮文庫)

私たちは、友達、仲間、家族、親族、社会、地域など重層的な人間関係の中で生活している。そのことによる悩み、ストレスもあるだろうが、そうしたものも、重層的な人間関係が吸収して緩和してくれ、日々を送っている。

 しかし、その重層さが煩わしく、干渉されることを厭い、社会との係りを否定し、徹底的に孤立して生きること、あるいは人間的関係が上手くいかなくて、社会から隔絶して生きてゆくことを信念にしたり、社会からつまはじきにされ生きてゆく人々もいる。こういう人たちが、苦難を迎えると、それを克服したり緩和するバックヤードを持たないため、人生に行き詰まることになる。

 この物語には、2組のカップルが登場する。ミカミと舞。舞は美容室を経営している。ミカミは舞が美容室を開店したとき、一緒に働いていたのだが、そこを辞め、今はアルバイト、無職をくりかえし、実態は舞に代わり主夫専業のようになっている。

 もう一組が、希子と道郎。希子は旅行代理店に勤めていて、道郎はテレビの孫請会社で音声を担当する仕事に従事している。道郎は、出張が多く、希子のマンションには時々帰ってくるだけ。

 更に、複雑にしているのは、ミカミと希子はかっての知り合いで、ミカミは舞の過激な行動に対応できず、それは舞に友人がいないからと思い、希子に舞と友人になってほしいとお願いし希子もその依頼に沿って行動すること。

 舞は、ミカミの行動や態度が少しも気に入らないと、ミカミに徹底的に暴力をふるう。それに対し、ミカミは全く抵抗することはなく、されるがまま。

 それが舞は気に入らない。自分をミカミはバカにしている。同じ目線ではなく、いつもヘラヘラと上から目線でミカミは見ている。
 舞は、ミカミと対等の関係になりたいと思っている。そして、対等な2人だけで誰にも邪魔されないように繭をつくり、そこで暮らしたいと願っている。それができないからミカミを殴る蹴る。

 一方希子は道郎の家になりたかった。道郎が部屋のドアを開けたら、目いっぱい抱きしめる。そして、道郎が一緒になって、子供を作ってくれというのを夢み、心から願っている。

 もう道郎と2人だけの家、繭を作りだれにも拘わらず生きてゆきたい。

 しかし、そんな繭をつくることは幻想である。その繭が創れない現実を認識し、繭からでようとしたとき、暗く、凍り付くような社会が待っている。

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| 古本読書日記 | 05:50 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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