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湊かなえ    「ポイズン ドーター・ホーリーマザー」(光文社文庫)

 私は知らなかったが「毒親」という言葉が流布しているらしい。子どもからみて扱いが大変で、厄介とみなされる親の俗物的言い方だそうだ。この作品、この「毒親」を扱っているが、タイトルでは「毒親」でなく、「毒娘」親は「聖母」になっている。ここの反転が印象的。

 主人公の弓香は、女優をしている。たまたま出演したテレビのクイズ番組で、優秀な成績と個性を発揮し、「人生オセロ」という人気番組への出演依頼がある。

 この番組は出演者の人生記を、美しく幸な部分をまず語り、その後、どん底で苦節の部分をオセロの白黒が反転するように語る番組である。

 弓香の白の部分は、高校時代一緒に図書委員をした友達理穂との思い出である。本やマンガを交換しながら読んで語り合う熱い友達だったと弓香は思っている。

 黒の部分は、母親との暮らしである。弓香の父親は弓香が幼い時病死していて、弓香は女手ひとつで育てられる。父親は中学の国語教師で、人気も高かった。母親は弓香に国語の教師になることを幼い時から義務付ける。

 漫画はダメ、父親の残した蔵書を読め、他人の家に行ってはダメ、そんな暇があるなら勉強しろ、恋もダメ、これらに触ることが発覚したら、強烈な叱責、時に手もでる。弓香は何も言い返せずいつも「ごめんなさい」と謝るだけ。

 この暗転をテレビでしゃべり、弓香の母親は「毒親」となり、しばらく後に交通事故で亡くなる。しかし目撃者は、母親は走ってくる車に自ら飛び込んだように見えたと証言する。

 友達だと言われている理穂の義母は、弓香の母佳香を「毒親」とは全く違うイメージをもっている。義母は、仲間でグループ保育サービスをしていた。夜遅くまで働いている母親佳香は毎晩遅く、園に手土産を持って弓香を引き取りにやってきた。そして慈しむように弓香の手をにぎり家へと帰っていった。

 地元では、弓香の母佳香は、「毒親」どころか「聖母」にみられていた。そのことを義母の手記として理穂は自分のブログにアップした。

 ある日、弓香から理穂にどうしても会ってほしいと電話がくる。
会うと、弓香は母を冒涜した最低の女性と評判がたっている。こんなことを流したのは誰なのか教えろと弓香が理穂に詰め寄る。

 その時に理穂は同級生だった江川マリアがなぜ自殺したのかを話す。江川マリアは、弓香がいじめられていた時、唯一友になってくれた子だ。しかし、母佳香から、あんな母親の子と付き合ってはいけないと言われ、関係を冷たく断った。そこからマリアは学校に来なくなり、そのうちに学校を去った。

 マリアはだらしない母親に売春を強いられていた。しかも妊娠堕胎までしていた。まさに「毒親」だった。マリアはそれでもしょげずに我慢して明るく振る舞っていた。

 そんなマリアに恋人ができ、2人は結婚の約束までしたが、母親が引き裂いた。それでショックを受けたマリアは自殺した。婚約者は今でもマリアの命日には墓に花をささげている。

そんな話を理穂が弓香にする。弓香が言う。
 「婚約者は?マリアが傷ついても、婚約者が受け止めてくれたら、自殺することは無かったんじゃないの?」

 この後の理穂の言葉が実に凄く、拍手を送りたくなる。
 「それ、自分なら受け止められる覚悟があって言ってんの。自分がマリアの立場でも、婚約者の立場でも、まっすぐ立っていられる想像しながら言ってんの」

 この作品、直木賞候補になったが受賞はできなかった。しかし、湊さんの心の叫びはずっと残る。

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| 古本読書日記 | 06:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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