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獅子文六    「おばあさん」(朝日文庫)

私の祖母もこの物語の主人公のおばあさんと同じ明治生まれだった。子どもは7人。いつも何かにつけ、父の弟や妹が我が家にやってきた。そして、困ったことを相談する。おばあさんは全く出しゃばらなかったが、父が困ったりすると、かならず、びしっと、意見を言って、収めていた。子どもだったからもめごとの中味はわからなかったが、優しいが、一本筋が通っていて、気骨のある明治の人だった。

 この作品の主人公納冨家のおばあさん、女学校を卒業している明治生まれのインテリ女性。普段は穏やかな雰囲気なのだが、ひとたび周囲でトラブルが起きると、気骨があり、ビシっと決めて、解決をする。

 この作品は、1942年から44年、戦争中に「主婦の友」に連載され、舞台は太平洋戦争に突入する1941年になっている。ということは検閲が厳しく、それをクリアしないと連載はできない。

 おばあさんを慕っている孫娘の丸子が父親の上司の紹介で立上恒夫と見合いをする。丸子は社会にでて活躍したいし、自分の意見も主張する、新しいタイプの女性で、見合いをしても結婚など考えられない。しかも、恒夫の父親とおばあさんが、2人をめぐって大喧嘩をして結婚話は立ち消えとなる。

 ところが、2人が偶然、丸子が勤めている工場の食堂でであい、恋が芽生える。それで結納をして2か月後に式をあげることになる。ところが、恒夫に召集令状がくる。出征は1週間後。

 丸子の両親、立上の父親は、出征ということは死ぬことを覚悟すること。まだ2人は式をあげてないのだから、結婚はとりやめにしようと言う。

 しかし、おばあさんは結婚は両家で約束したこと、何があっても結婚はせねばならないときっぱりと言う。さらに、丸子も全く同じことを言う。

 それで2人は何と三日後、出征の4日前にあわてて式をあげ結婚する。

 戦争中こんなことになると、結婚ができなくなって、愛し合う2人が引き裂かれ戦争の悲劇を描く物語になる。しかし、出版時は戦争の最中。こんな物語にしては出版できない。

 軍も、こんな事態になっても、この物語のようにあるべき姿として決然と結婚する姿を推奨したい。そんな意図が貫かれた小説になっている。戦争の最中に本を出版するということは、どういうことなのか印象に残る作品だった。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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