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吉田篤弘     「電球交換士の憂鬱」(徳間文庫)

世の中には存在しえないだろう、切れて点灯しなくなった電球を交換することを職業にしている人は。そんなあり得ない職業についている主人公十文字扉が遭遇する厄介ごとをめぐる連作短編集。

 電球交換士なんて仕事が成り立つのかと思うのだが。美術館などの公共施設やデパートなど一度に大量の交換が必要な場合がある。

 それから、十文字の電球は、一般の電球と違う。ずっと昔からあるカンザキ印の電球を、マークを十文字に変え、交換に使っている。
 古き良きものにこだわる人たちが結構たくさんいて、十文字が交換する電球でないと受け付けない、そんな人たちのために十文字は電球を交換する。

 東品川駅の電球を交換しているとき、誤って十文字は電流を浴び、倒れ、失神する。連れていかれたのがヤブと言われる医院。

 ヤブが太鼓判を押す。あんなに強い電流を浴びても死ななかった十文字は不死身の人間であると。

 だけど不思議なのは、月一回病院に通院している。不死身の人間が何で通院などするのだろう。そして思う。人間がみんな不死身になったら、真っ先に世の中から無くなるのは病院、医者だと。

 吉田の作品はいつもじわっとノスタルジーを感じさせる。

私の幼い頃には、家に机や腰掛が無かった。畳にべたっとお尻をつけて、ちゃぶ台で勉強や遊びをした。

 物語でアスカの部屋の電球をとりかえるのに、電球のソケットまで手が届かない。それでアスカの丸めた背中に乗って、十文字が電球を取り換える。

 私の家でもそうだった。兄貴が丸まって私がその背中に乗り、高いところにある物を取ったり電球を変えたりした。

 カンザキマークの社長神崎が十文字を裏切って、半永久的に壊れない電球を作った。こんなことをされれば、電球交換士の仕事は無くなる。

 これは寂しいことだと思っていたら、十文字の後をいつもつけていた不気味な男が最後に登場して、交換に自分のところで製造している電球を使ってほしいという。ほっとして本をたたむ。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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