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荒木源    「早期退職」(角川文庫)

 リストラで退職寸前まで追い込まれた主人公が、それをはねかえして会社の病巣に対し立ち上がり、その病巣を撃墜するという、池井戸の作品を連想させるような物語。しかし、池井戸のレベルに比べれば低く、中味は薄い。

 それでも、自信に満ち溢れ部下5人を引き連れ、しかも自分は創業者一族の社長を除けば最も地位の高い専務に信頼されていると信じていた主人公が突然、その専務に呼び出され、早期退職募集に応募してくれと言われ、そこからの主人公の苦悩については、なかなかリアリティがあり感心した。

 主人公の辻本は52歳で、それなりの規模のもつ菓子メーカー「エンゼル菓子」の営業課長。最も信頼されていると信じていた織原専務に呼び出され、早期退職募集に応募するよう要請される。
 酒を浴びるほど飲み、倒れ込むようになって家に帰る。翌朝、スマホで50代再就職と検索してみる。

 のっけから
「中高年は賃金が高い割に生産効率は低い。あなたは会社にとってそういう存在であることを自覚せねばなりません。」と表示がでて。がっくりする。そして
「今の時代50代で隠居生活というわけにはまずいけませんから再就職先を探すということになります。
 ですが、自分に大した価値がないことを決して忘れてはなりません。ここを間違えると次の仕事は見つかりません。仕事内容や給料に関して、思い描くことと現実のギャップに驚くかもしれませんが、こだわりを捨てて、大胆に妥協する必要があります。」

 そして現実例として、銀行マン、1000万円を超える年棒が、老人ホームの経理部門で仕事につくが600万円になる。アパレル営業の人がフォークリフト運転手になり600万円から300万円になり、車のディーラーからガソリンスタンド店員になり550万円から200万円になる。

 もちろん特殊能力があり華麗に転職し大幅給料がアップする人もいる。こういう人たちは「~方」と呼ばれ、通常の退職者は「~人」と呼ばれる。

 暗澹としていると、「セカンドライフで夢実現」という表現で希望、救いの対処方法がでてくる。
 鮮やかな新鮮野菜とのどかな田舎の写真をみせ、のんびりスローライフを満喫し、本来の人間をとりもどしましょう。
 この魅力満載の言葉に主人公はぐっとよりかかりそうになる。

とても、のんびりなどという生活が実現できるわけではないが、弱り切った気持ちに希望を与えるには甘いささやきだ。

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| 古本読書日記 | 06:35 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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