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黒川博行    「勁草」(徳間文庫)

 今回の物語は、世の中にはびこり、なかなか犯人を逮捕できない「オレオレ詐欺」を扱う。

「オレオレ詐欺」というのは、今は最も大きい暴力団の資金源になっている。暴力団は詐欺グループを支配し、そこから詐欺で得たお金だけを収奪する。

 詐欺は幾つかのグループにより、機能的に行われる。
掛け子:詐欺の電話をかける者、出し子:ATMにお金を引き出す者、受け子:お金を受け取る者、道具屋:闇の携帯電話や架空口座を準備する者、見張り子;受け取ったお金をもって逃げないように見張る者:掛け子、出し子、受け子などを集めてくるリクルーター。

 そして、重要になるのが名簿屋。名簿屋は企業を退職したり、多重債務者、株取引経験者の名簿を集め、さらに、集めた名簿の家庭を訪問し、家族構成情報を収集し、誰を詐欺のターゲットにするか決める。

 受け子などのグループを統括するのが番頭。
今回の物語では、キーパーソンになる名簿屋は高城で、番頭にあたるのが橋岡と矢代。

 高城のもとで動かされているグループにはわずかな金が与えられる。橋岡と矢代は、賭場で大きな金を失い、損金を支払わねばならなくなる。

 橋岡と矢代は、高城がでかい金を持っていると思い、お金を借りようとするが断られ、思い余って高城を殺害し、遺体を東京郊外の森の中に埋める。

 そして、高城の事務所に侵入し資産をつかむ。預金が、4つの銀行に分散して八千万円。株が1億7千万円。合計2億5千万円ある。その通帳、証券証書と届け出印を手に入れる。

 面白いのは、詐欺集団の手口が巧妙化すれに連れて、銀行や証券会社も詐欺事件を防ぐために、どんどん防御方法が高くなること。
 だから、詐欺で集めたお金を銀行や証券会社から引き出すのがどんどん困難になってくる。

 銀行の窓口に通帳と届出印をもって出金しようと橋岡がするが、それだけでは出金はできない。口座名義人であることを証明する物がいる。それは、ATMカードの暗証番号か免許証。暗証番号は橋岡は知らないし、自分の免許証をだしても名義人と異なる。にっちもさっちもいかなくなる。

 証券会社は、株を売った金は現金では渡さず、登録された口座に振り込むという。当然登録口座は高城の口座だから、そんなところに振り込んでもどうしようもない。

 銀行では、通帳と印鑑で20万円/日で金を引き出すことができた。引き出さねばならないお金は8千万円。これを4行で毎日80万円ずつ引き出しても100日もかかる。
 そんなことを窓口で毎日すると、銀行が不審者として、警察に届ける状態になる。
詐欺で獲得したお金を、自分たちの詐欺が原因で引き出せないというジレンマがなかなか面白い。

 黒川の作品はミステリーではなく、犯罪者視点から物語が創られ、犯罪者の行動、気持ちの動きがいろんな場面で、生き生き描かれそこがたまらない魅力である。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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