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黒川博行    「離れ折紙」(文春文庫)

ガラス工芸品、絵画、日本刀など美術品をめぐる6編のミステリー小説集。

タイトルにもなっている「離れ折紙」とは、刀剣鑑定で有名な本阿弥家が極めた鑑定書のことを折紙といい。本来刀剣は鑑定書とセットであるべきものだが、折紙を紛失したり、大事なものではないとかん違いして捨てたりしてしまった鑑定書のことを「離れ折紙」という。

 本のタイトルにもなっている「離れ折紙」も面白い作品だったが、特に印象に残ったのが「老後ぼったくり」。

 大阪西天満で美術商を営む立石のもとに、昔からたくさんのコレクションを持ち込む蒲池より、大量のコレクションが持ち込まれる。立石は美術品買い取り時、値段交渉は一切せず、言い値で買い取ることで有名。だから売人もふっかけることは一切しないようになる。

 さて、立石に美術品を持ち込む蒲池は民自党で派閥を形成、その長として君臨。経企長官や政調会長を歴任した大物政治家大迫亨が起こした大迫家の資産管理や美術品管理を行う大迫恒産を任せられている。つまり、蒲池が持ち込む美術品は大迫財閥が所有しているコレクションなのである。

 そして今回の品は52点と大量で、立石は5000万円で購入する。蒲池は、今回の代金の振込先を、大迫の孫が結婚するということで、振込先を変えてほしいと新たな口座番号を書きおいて立ち去る。

 それから3か月、販売は順調で三分の一の美術品が売れる。ホクホクしているところに神奈川県警の辻井という刑事が訪ねてくる。

 実は、蒲池が持ち込んだ52点はすべて蒲池が盗んで立石に販売したもの、盗品であることを知らされる。ずっと、立石は蒲池と取引をしていたので、立石も盗品だと知っていて購入したのではと、大迫の弁護人が立石を告訴する準備をしていると言う。

 全く善意の第3者であるはずの立石が動揺する。盗品を販売していたとなると、立石の評判はガタ落ちとなり、廃業を余儀なくされる。だから、どうしても告訴は取り下げてもらわねばならない。

 ここから、俄然物語は緊張してきて、立石は誤った工作をしようとする。それがさらに緊張をたかめ、面白い仕上がりになっている。

 黒井は美術品売買のカラクリを実によく調査している。たくさんの専門用語が飛び交うが、簡潔に説明がなされ、全く違和感なく読めた。

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| 古本読書日記 | 05:24 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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