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柚月裕子   「最後の証人」(角川文庫)

ホテルの一室から、女性の遺体が発見される。胸には食事の時に使うナイフが刺さっている。死亡推定時刻の直後に同じ部屋に一緒に泊まっていた男が、ホテルをでてゆくのを防犯カメラがとらえている。

 どうみても、男が刺殺した犯人しかありえない。通常このような場合、弁護人と男は、正当防衛とか、殺人の意図はなかったと主張して、殺人は認めるが、減刑を多く獲得する戦術で裁判に臨む。

 しかし犯人とされた男は、男が犯人でしかありえない状況で、自分は無実だと主張する。
こんな事件の弁護を引き受けたのが、ヤメ検の佐方弁護士。佐方弁護士が検事をしていたときの上司が筒井。この事件の検察側の検事はまだ若い女性検事真生。彼女も筒井の薫陶を受けている。

 筒井は常に言っている。
「事件は、表面にでている証拠をみるのではなく、まず事件に関係している当事者たちの人間をみろ。」と。
 佐方は、この思考を完全に筒井よりたたきこまれていた。

 殺人犯とされた男が、これだけ証拠が明白なのに、どうして無罪を主張するのか。動機は、不倫関係にあった男女、女が男に今の妻と別れて一緒になってくれとしつこく迫り、それを堪えきれなくなった男がホテルに女を呼び込み殺人をしたといういかにも世間にありがちな動機だと思い込まれ男が犯人にされたていた。

 しかし、よく調べると、犯人と被害者は知り合ってまだ2か月。そんな短期間で、不倫はこんな状況にまで至るものだろうか。

 そうすると、被害者の女性と男の関係の違った部分がみえてくる。この違った部分と今回のホテル密室殺人事件がつながってくる。

 この違った部分の掘り起こしと、公判で追い詰められた佐方が、最後の切り札として起用した証人。その証人を証人台にたたせるまでの執念が、読者に鋭く迫ってくる。その迫力と筆力が素晴らしい。

 被害者と思われていた女性は、自分で胸を刺し自殺をしていた。女性はそれを殺人事件に仕立てて、男を殺人犯にすることが目的だった。

 しかし、自殺してまで男を殺人犯に仕立てる動機に読者の納得感が得られるようなものがあるだろうか。
 そこを柚木は、見事に描き、読者を納得させている。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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