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朝倉かすみ    「てらさふ」(文春文庫)

  タイトルの「てらさふ」は古語で「みせびらかす」という意味だそうだ。

  この物語は、作品が出版になった直前に起こった、佐村河内作曲偽装事件を思い出させる。広島被爆者2世で天才作曲家として一世を風靡していた佐村河内作曲の作品は、佐村河内がイメージを創り、それを基にして新垣隆という覆面作曲家が実際の作曲をしていたことが暴露され、佐村河内氏は、世の中の湧き上がる非難のなか、奈落の底に完全に落とされた事件だ。

 主人公の堂上弥子は14歳の中学生。読書やもの書きが大好き。彼女は何としても最年少で天下の芥川賞をとり、注目を浴びたいことを願っている。

 弥子の中学校に札幌より鈴木笑顔留とかいてニコルと読むキラキラネームの子が転校してくる。ニコルは美女でモデルのような子、音楽大好き、いつかタレントとしてはばたきたいと思っている。

 弥子は自分は大人しく、社交的でなく、容貌、体形も中クラスで見栄えもしないため、ニコルを前面にだし、自分は裏方で作品をつくり、2人共同で、作品を発表することを計画する。

 まずは小樽市が主催する読書感想文コンクール(実作者は弥子、発表作者はニコル)で発表して、最優秀賞を受賞。全道大会で知事賞を全国大会で文部科学大臣奨励賞を受賞する。
 しかし感想文コンクールでは有名にはならない。高校生になり弥子とニコルはいよいよ本命の芥川賞に挑戦する。

 しかし、高校生では小説のモチーフは浮かんでこない。そんな時同級生の糸田君のおばあさんが昔小説を書いて同人雑誌に発表していたことを知る。そして、図書館でその雑誌を発見。そこには2作あった。「あかるいよなか」と「うさぎ」である。

 「あかるいよなか」はおばあちゃんの青春時代昭和40年代が描かれる。ボンカレーや水原弘が物語に登場。とても、現在の高校生が書けるとは思えないが、もうひとつの「うさぎ」は戦争体験の物語、これよりは真実性があるだろうと「あかるいよなか」を、糸田君におばあさんが強度の認知症で記憶がよみがえれないことを確認して、文芸誌に作者ニコルで送り、雑誌に掲載される。

 作品は文芸誌新人賞を獲得。その後、見事に芥川賞を受賞。作家ニコルことニコが美少女であったことが、反響をよびニコは超有名人となる。

 しかし、読書が好きでないニコが数々のインタビューに登場。いくら指南者の弥子がいても、ニコが作者で通すことは難しい。
 また弥子も芥川賞受賞の次作が書けない。
 さらに、賞金や印税は弥子とニコで2等分していたが、税理士に見つけられてしまい立ち往生する。これでは、ニコが偽作者であることはばれる。

 佐村河内さんのときは徹底的に世間から叩かれ、もちろん弥子もニコも叩かれたが、それで真っ暗闇に突き落とされたという感じは全くしない。

 ちょっと人生の道をはずれてやってみたいことをやっただけと結構あっけらかんとしている。ネットの普及により書くことの敷居が一段と低くなった現在、普通感覚でホイホイいろんな文章が生まれ、こんな感じで本ができるのが主流になる時代がくるかもしれない。

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