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池波正太郎      「秘密」(文春文庫)

池波正太郎は20年ほど前、熱を入れて読み、殆どの作品を読んだのではと思っていたが、古本検索でこの作品が未読だとわかり、早速購入し手にとってみた。

 主人公の片桐宗春は、やむを得ない事情のため、篠山藩家老の息子堀内寛蔵を果し合いの末刺し殺す。そのため、寛蔵の弟、堀内源二郎に父親が命令して仇討を果たそうとする。源二郎とその仲間を含め3人が、宗春を仇討のため追い詰めてゆくことが物語の主題になっている。

 宗春は、医者である父宗玄が友人だった滑川元敬の息子で同じ医者である滑川勝庵の隠れ家に身を寄せ、一時江戸は離れたもののまた舞い戻りひっそりと逃亡生活を送ることになる。

 いかにひっそりと言っても、人間は他人との係りのなかで生きていて、その係りが新たな難事を呼び込み、それを取り込み、克服しながら生きてゆく。池波の作品は、その係りに無理が無く、なるほどと読者を納得させながら、物語を進行させるのが実にうまく見事である。

 勝庵の患者で、袋物商で財を築いた吉野家清五郎。勝庵では病気が快方しないため、宗春を紹介して診てもらうと、痛みが消え元気になる。清五郎は喜び、掛かりつけの医者として宗春を指名して宗春もそれに応える。その宗春は、先妻の後妻にお初を娶る。このお初は、実は宗春がかって恋した女性。しかも宗春がお初にとって初めての男。

 さらに、源二郎が宗春と思って、刺した男。一見、宗春とそっくり。名前は萩原孝節。実は宗春の腹違いの兄だったことが後に判明する。

 これに元娼妓で、その娼妓館が火災で焼け、館主が館を閉じ、それで解放されて料理屋「大むら」の女中になったお民。宗春とこのお民が恋仲になる。

 物語にキーとなる人間が無理なく結びつけ活動できるように、周りに多くの人たちが上手く配置されて見事。

 池波は昭和の時代に江戸を描いた作家とは思えず、まさに江戸時代を生きて物語を描いているように思わせる。
 江戸言葉、人情、そして鮮やかな風景描写。加えていつものようによだれがでそうになる料理の数々。読者に物語だけでなく江戸を堪能させてくれる。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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