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本谷有希子   「乱暴と待機」(MF文庫 ダ・ヴィンチ)

この作品はわかりにくい。何がわかりにくいかというと、陰気な借家に同居する妹奈々瀬と兄英則が、兄は奈々瀬を殺して復讐を遂げるという強い思いがあり、妹奈々瀬は兄の復讐を心から待っている、ただ復讐するための原因が不明朗のために、それがわかるまで2人で同棲して、原因が判明すれば兄は妹が納得づくで、妹を殺して復讐を遂げるという設定がすっと飲み込めてこないところだ。

 実は、この奈々瀬と英則は兄弟ではなく、家が隣同士の幼馴染。小さいときから2人で遊び、互いに兄妹のように仲良く暮らしていた。そして、復讐の原因は、英則家族と奈々瀬がドライブに行ったとき、踏切のある線路上で車がエンストして、そこに電車が突っ込み、英則の両親は死亡。英則は足に思い後遺症が残るけがをしたが奈々瀬は無傷だったことに原因がありそうだと物語は匂わす。

 ここに、英則の仕事場の部下番上と恋人のあずさが絡んでくる。

今の時代、命を懸けるということはどういうことだろうか。私たちの少し前の世代では、仕事を懸命にするということだった。それは高度成長につながり、その成果、見返りが給料アップ、暮らしが目に見えて向上することが認識できた。

 今は、全く命を懸けるような対象はなくなり、漠然とした不安や恐怖が漂っている。健康や癒しがキーワードとなり、健康産業や美容、マッサージが流行。長寿にはなったが、認知症や介護難民がその先に控えている。ただ、漫然と生きることが悪とだんだん思えてくる。そんな時代を反映しているのが、番上とあずさの関係だ。

 そして、この先、命は軽いものとなり、英則と奈々瀬の関係のように、簡単に命を落とすことは普通になる世界がやってくる。こんなことを物語は描いているのかと思った。

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