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本谷有希子     「自分を好きになる方法」(講談社文庫)

三島由紀夫文学賞受賞作品。

主人公リンデは「お互いに心から一緒にいたいと思える相手」を求め続ける。そんなリンデの3歳、16歳、28歳、34歳、47歳、63歳のある日の数時間の出来事を切り取ってリンデにはそんな相手がみつけられないという事実を描写している作品。

 秀逸だと思ったのは、幼少時から63歳まで順番にエピソードを配置するのではなく、3歳を63歳と47歳の間に挿入したところ。この3歳のエピソードが、相手を見つけられないのは仕方ないと読者に納得させる大きな力となっている。

 47歳の時、友達を集めてリンデの家でクリスマスパーティをする。ほのかに恋心を抱いているジョンさんもやってくる。その準備にジョンさんと一緒にツリーに飾るオーナメントを買いにホームセンターにゆく。しかし2人とも、どのくらいの長さのオーナメントが良いのかわからない。それで、一番長い15メートルのオーナメントを買ってくる。

 オーナメントは床にだらりととぐろをまくように置かれたが、電飾をつけると金色に灯りを放ちすばらしい雰囲気となる。

 そんな、パーティが楽しい雰囲気で終了。リンデの家ではこんなでかく長いオーナメントを保管できるスペースが無い。それで、誰かに持っていってくれるように頼む。しかし、誰も無視する。ここでリンデが爆発して癇癪をおこす。
 「全部私におしつける。みんなで私をバカにして」と。この癇癪でパーティは台無しとなる。

 リンデがホームセンターに行こうとしていて、玄関のポスト受けを確かめたら、宅配の不在者伝票が残されている。配達業者に連絡するとこれから配達にいってもいいかと聞かれる。これからは外出するので難しい。できれば9時以降にしてほしいとお願いすると、規則で9時までしか配達できないと業者が答える。

 そんな態度だと、運送配達などやっていけなくなるよと怒り電話をきる。
パーティが終わり家でリラックスしていると、電話がある。
 9時は過ぎているけど、おたくの近くまできている、配達に伺ってもいいかと。少し、むかっぱらがする。しかし、いいですと答える。

 63歳のときの配達業者のやりとりと重なるのだが、そこまで来ていると言ってた業者がなかなかやって来ない。15分、20分と待つのだが。それで堪忍袋の緒がきれて、どうなっているのかと配達業者に電話する。もうすぐです、でも明日の配達にしても構いませんと業者が言う。

 そこにまたカチンとくるから、「持ってきなさい」と強く言う。それからも随分待つ。
もう眠ろうかとしたところでチャイムが鳴る。そして、業者から荷物を静かにもらう。

 これだから、心穏やかになる相手に恵まれないのかなと思い、3歳から今までの出来事を思い出す。

 人間は嫌なことだけは記憶にこびりつき、いつもわいてでてくる。63歳のリンデ、悪い思い出ばかりのように思うが、きっと忘れてしまっている楽しい思い出もたくさんあっただろうと私は信じてしまう。

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| 古本読書日記 | 06:02 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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