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本谷有希子     「ぬるい毒」(新潮文庫)

主人公の熊田のところに、向伊という見知らぬ男から突然電話がかかってきた。向伊は高校時代クラスは違ったけど、熊田と同学年だったと言った。しかし、熊田には全く記憶が無い。向伊は、高校の時、熊田から借りた金を返したいから会いたいと言う。向伊の声が魅力的だったから、全く金を貸した記憶は無いが会うことにした。

  会うと、向伊は、背も高く恰好もよく、熊田は心が惹かれる。
一年後に、帰郷した向伊に会う。一緒に奥出と野村という同じ高校の出身だという2人がついてきた。

 熊田も、多少の嘘と虚飾をしゃべったが、向伊は明らかに嘘だとわかる話をする。それに調子を合わせるように奥出、野村が熊田は見たことも無いほど美しいとはやし立てる。

 そして、わかってはいるが完全に熊田は向伊にとりこまれる。向伊が、熊田を利用して両親をだまし、金や財産を奪おうとしているところまで感付く。

 それでも、両親と大喧嘩をして、向伊と同棲しようと熊田は東京に向かう。
東京に着くと、奥出と野村が迎えにでていて、今日は向伊をいれて熊田の歓迎会をやると居酒屋に連れられてゆく。そこには何人かの女性がいた。向伊を見る目がみんなとろんとしている。あの女たちとは違うと熊田は思うことにした。しかし、向伊が耳元でささやく。
 「僕には、東京に5人の女がいる。」
その瞬間熊田は全くあの女たちと同列となっていることを実感する。

 ここからが、本谷のユニークなところだが、熊田は、だまされて、嘘をつかれていることがわかっていても、ひたすら向伊についていく自分の姿が愛おしく、この上なく可愛いと思い、このまま生きていこうと決める。

 一途に思い込んだら、騙されていることがわかっていながらもどうにもならない。

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| 古本読書日記 | 05:55 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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