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本谷有希子    「嵐のピクニック」(講談社文庫)

奇妙な雰囲気のある短編集。大江健三郎賞を受賞しているが、解説も大江健三郎がしている。

 どれも、妙な味わいのある作品ばかりなのだが、その中では「マゴッチギャオの夜、いつも通り」が印象に残った。

 マゴッチギャオは猿。動物園で、みんなと仲良く楽しく暮らしている。仲間と蚤取りをしていると、新入りがやってくる。ちょっと自分たちとは、容貌、恰好が違うと思っていると猿ではなくチンパンジーで名前はゴードンだという。チンパンジー仲間とうまくやれなくて、猿山に入れられたのだという。

 マコッチギャオたちはすぐに仲間にしてあげようと気をつかって話しかけたりするが、まったく一人ぼっちで馴染もうとしない。人間からもらったバナナなどの餌をあげようとしても全く受け取らない。

 しょんぼりしているようだが、どうも人間を意識しているようだ。

ゴードンは人間に育てられた。ゴードンは人間を理解し仲良くしたかったのだが、うまくいかなかった。ゴードンは寂しそうに、人間はイルカが大好きなのだという。イルカは、人間に対して、口の端を広げて笑う。これが可愛くて人間はイルカを大好きになる。

 ある夜、猿山にむかって人間が花火を放ち遊ぶ。この花火を避けようと猿たちは避難をする。しかしゴードンは動かない。マコッチギャオが懸命にひっぱってもゴードンは動かない。

 火がゴードンに降り注ぐ。マコッチギャオがゴードンをみると、ゴードンは花火を打つ人間に向かって口の端を広げている。
 ここが、じーんと胸を打つ。

ゴードンは焼け死ぬが、何と猿はとんでもない力をもっていて、ゴードンを生き返らす。
ゴードンはこれは奇跡というが、猿には当たり前のこと。奇跡が何のことなのかわからない。

 ここらあたりが本谷の独特の味である。

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| 古本読書日記 | 05:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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