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酒井寛    「花森安治の仕事」(朝日文庫)

2016年のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」で唐沢寿明が演じた花山伊佐次は花森安治がモデル。「とと姉ちゃん」は花森と組んで、戦争直後、女性のための雑誌「スタイルブック」を創刊し出版社社長になった大橋鎮子である。

 「スタイルブック」はその後花森の提案で「美しい 暮しの手帖」に変わり現在は「暮しの手帖」となって発行は続いている。

 花森は戦争中召集され満州に兵として行っている。しかし、そこで体を壊し、日本に帰され、悪名高き大政翼賛会に入社している。公募で集まった標語「欲しがりません、勝つまでは」を選んだり、「ぜいたくは敵だ」という標語を創ったり、戦争推進の立場で活躍した。

 その反省もあったのか、戦後彼を訪ねてきた大橋を前にして「男たちの勝手の戦争が国をむちゃくちゃにした。自分も女性たちに償いたい」と言って、大橋の提唱する女性たちのための雑誌の発刊を手伝うことを決めた。

 「暮しの手帖」が凄いのは、団体や企業の影響を受けることを防ぐため、全く広告を取らず、雑誌の購読費だけで出版費用を賄ったこと。そして、広告をとらない代わりに、大企業を含んで、あらゆる企業の商品を調査テストして、ユーザー目線からその優劣をつけた。

 洗濯機のテストは、あらゆる汚れを衣類につけ、一か月間洗濯機を回し続けるほどの徹底ぶり。回し続けるのだから、検査は徹夜で交代で行われる。労力も法外なものになる。

 この徹底検査と審査基準の公平性により評価があがり、発行部数は伸び最盛期には100万部近くまでになる。

 花森の編集姿勢は厳しく、原稿の多くは、あまり読むことなく書き直しと突き返すし、彼の使う鉛筆がきちんと机上に並べられていなくて、一本でも曲がっていると、怒り狂って一切仕事をしなくなる。奇人ぶりはおかっぱ姿で女装をときにする。

 新入社員受験の会場にやってきて、あいさつをする。その後野菜や肉をとりだして料理人に「酢豚」を作ってもらう。受験者は酢豚の料理方法を懸命に覚える。それが終わって安心していると、再び花森が登場して、「受験問題です。酢豚を作る前に、私が言ったことを600字以内にまとめなさい。」
受験者は完全に目が点になる。

 この作品、花森の生い立ちから、「暮しの手帖」時代の輝かしい功績までの生涯を描いている。しかし、なぜか、花森の大政翼賛会時代については殆ど触れていない。

 そこが私にポッカリとした空しさを連れてくる

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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