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伊坂幸太郎   「火星に住むつもりかい?」(光文社文庫)

 世の中には、個々の人々の人権や自由を基本的人権として最も重要視する国もあれば、個人より国家の安定、繁栄ひいては、権力を握った個人の安定、繁栄を最優先にする国もある。中国、北朝鮮、ロシアなどがこんな国にあたる。

 日本は個人の権利、自由が最優先の国のように見えるが、中選挙区制をやめ、政権交代が実現することを目的として、小選挙区制の導入したことにより様相は大きく変化した。

 中選挙区制では、多くの異なった政党が議席を得ることになり、独裁的な人間や政党がでることは困難になる。

 小選挙区制では、得票数がたった一票でも足らないと、争った相手は負け、負けた候補に投票した票はすべて死に票となる。結果、大勝か大負けしか現れなくなり、勝利した勢力と敗戦勢力との議席差数が異常に大きくなる。

 こうなると勝利した勢力、リーダーは国民より国家第一主義という旗のもとに、リーダーがやりたいことをし放題になり、個人の自由は厳しく制限される。

 そして、この作品のように、極端になると、国家反逆だと思われる人間を、とっつかまえて、自白するまで、拷問を続ける。監視社会が徹底され、告げ口だけで捕まり、ギロチンで公開処刑されるのが運命となる。

 恐ろしいのは、対立勢力のどちらも権力を握ると、国家主義に変貌し、個人にとっては救いようのない世界となる。だから地球に住むのをやめて「火星に住むつもりかい?」ということになる。

 この物語に久慈という理容店の店主が登場する。この理容店を利用している大森鴎外君が残した、白幡研究所が開発した強烈な力を持つ磁石で、久慈が利用客を救うために、人民に反逆する「平和警察」に立ち向かう。例えば、車によりかかる敵に磁石を投げると、磁石が車の鉄に反応して、猛スピードで敵の体にうちあたり、磁石と車体に挟まれ、動けなくなる。そこを木刀で殴り倒す。このあたりは痛快である。

 しかし、このことで、理容店の顧客が「平和警察」に引っ張られる。どうあがいても救われない人々の姿にやりきれなさが募る。

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| 古本読書日記 | 05:53 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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