FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

岩波明    「心の病が職場を潰す」(新潮新書)

うつ病は、今やありふれた病気になり、企業内にも発病して治癒をしている人はあちこちにみられる。

 うつ病が発症した人の大きな問題は、病気の再発率が高く、職場に復帰しても、周囲は腫物を触るような扱いをし、更に当人の業務能力も極端に落ち、職場の重荷になることが多いことである。

 だから企業は、本音で言えば、会社の退職を望むし、この本では、露骨にやめるように企業が仕向けたり、企業内でも引き取り手がなく困り果てる現実を描く。

 取り上げられているどの事例も(一例を除いて)、現在のおかれたうつ病罹患者問題を浮き彫りにすることを意図しているのか、うつ病が治癒しても職場に復帰できなかったり、復帰しても、通常の仕事ができず退職し、労災補償を求めて会社との争いの事例ばかりになっている。

 私の職場にも結構重いうつ病にかかった人がいた。私がうかつだったのだが、彼と部下との関係が悪化して、部下より排除され、孤立化していたことを把握していなかったことだ。

 そのうちにいつも声をあげて部下に指示命令していた姿が消え、孤独で憂鬱、寡黙な姿に変わり、仕事が手につかず、茫然としている状態になった。

 メンタルクリニックを会社から紹介してもらい、診断を受けたところ「うつ病」と診断され、会社は休職、自宅療養となった。

 時々、自宅まで様子を見舞いに行ったが、やせ細り、よだれをだらーっと垂れ流し、こんにゃくのような状態になっていた。その時は職場復帰など夢で、この病気は治らないのではと思った。

 治癒したということで、一旦職場に復帰したが、すぐうつ症状がでて、再度休職となる。さすがに彼ももはやこれまでと思ったようだ。
 その彼が治療の結果治癒したということで、まあ会社も配慮が無いというか、元の私の職場に復帰してきた。

 その時、みんなを集めて言った。「医者が治癒したと診断しているのだから、必要以上に気を使うな。普通の人として認めて、通常どおりの対応をしろ。自分もそうするから。」
 だから、部下との衝突をしたときも、彼を叱った。

 そして、転機となったのが、私の職場に、タイの工場から、私の職場で行っている業務のできる人を派遣するよう要請がきた。
 精通、仕事の能力からみれば、適当な人材は彼しか思い当たらなかった。彼もやってみたいと応じてくれた。それで彼を転勤させる決意をした。

 人事部門を中心に周囲から猛反対を食らった。追い詰められて、クリニックの先生のところまで行き、先生に転勤しても支障はないと一筆書いてもらい人事部に提出し、説得をした。

 タイの工場長も、彼の経歴を知った上に、彼の仕事っぷりを見ていて問題ないと判断してくれうれしかった。

 そしてタイに転勤。私自身も心配だったので、それから海外出張のあるたび、用事もないのにタイに立ち寄り彼の元気で活躍していることを確認した。彼はその後ヨーロッパ駐在もして、定年まで勤め上げた。

 この作品、うつ病罹患者の企業での扱いの困難さばかりを強調するのでなく、職場復帰をして活躍した事例ものせてほしかった。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ



| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT