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貴志祐介     「硝子のハンマー」(角川文庫)

株式上場を間近に控えた介護サービス会社の社長が撲殺される。社長の部屋はビルの12階。社長が殺された時間前後に、防犯カメラに出入りする人は誰も映っていない。しかも出入口は完全施錠。窓もはめ込み式で開閉できず、しかも、専門的でわからないのだが、10mmの厚さのある超強化ガラス2枚の間に約3mmのポリビニールプチラールの膜を挟み拳銃でも打ち抜くことはできない状態。完全な密室状態。

 これでどうやって撲殺ができるのか。

2つ前提条件がある。社長は最近未破裂動脈瘤で倒れ、開頭手術を受け、頭にちょっとした衝撃を受けても簡単に倒れる可能性があること。

 更にこの会社では、介護ロボット、ルピナスAを試作、開発している。このルピナスAは300KGまでの人間を持ち上げ運ぶ。しかも、障害物を認識すれば、衝突を避けるために速度を落とし、手前で自動的に停止する。

 完全密室に侵入することなく、殺害をどのようにして行ったのか。この殺人犯はビル清掃会社の社員。
リモコンを使い、眠り薬を飲まされ熟睡している社長をルピナスAに抱えさせ、窓際まで運ばせる。そして頭の先端を窓ガラスにピッタリとくっつけさせる。そこで、持ってきたボーリングの玉を、頭にくっついているガラスに懸命に打ち付ける。開頭手術を行ったばかりの頭がその衝撃で割れ傷つき、そして社長は床に投げ出され死んでしまう。
 頑丈な窓ガラスは、付いた埃を拭えば、全く元通りになる。全く想像もつかない破天荒なトリックである。

 作品は日本推理作家協会賞を受賞している。

この物語で、ルピナスAについて介護評論家が語る場面がある。
「機械に介護されるということをお年寄りたちはどう考えるでしょうか。フォークリフトで持ち上げられ、運ばれ、置かれる。介護する側からすれば効率もあがり良いことでしょう。しかし、介護される側からみれば、人間をモノのように扱われ、尊厳や心の問題はどうなるのでしょう。」

 現実を尊厳とか心の問題とか抽象的な言葉で矮小化して、ふんぞりかえる評論家が確かに見受けられる。

 しかしお年寄りも、持ち上げたり運んでくれ腰を痛めてしまう介護職員に、申し訳ないという気持ちがいっぱいである。

 きれいな言葉で本質を糊塗とするのではなく、厳然たる現実をみて議論はなされないといけないとこの作品を読んで感じた。

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| 古本読書日記 | 05:51 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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